研究課題/領域番号 |
24656499
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
池袋 一典 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70251494)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | アプタマー / ナノ構造 / 電気化学測定 / バイオセンシング / VEGF |
研究概要 |
平成24年度は以下の研究を実施した。 1)GDH結合アプタマーとVEGF結合アプタマーを連結し、その連結アプタマーのナノ構造を評価する。更にこの連結アプタマーとGDHを結合させたGDH-アプタマー複合体を作製し、そのナノ構造を評価する。 2)上述のGDH-アプタマー複合体のナノ構造が、VEGFの結合により変化するかを検討し、電極でその変化が検出しやすいように設計する。 3)GDH-アプタマー複合体を金電極に固定化し、VEGFの添加によりグルコースに対する応答電流が変化するかを検討し、電気化学的VEGF検出システムを構築する。 1)については、我々は既にグアニンが6つ連続する配列を2カ所持つアプタマーが複数のG-quadruplex(Gq)構造を有した重合体であるG-ワイヤーを形成し、これがGDHに数十nMの解離定数で結合することを見出している。またGの6連続配列が2つ有れば、その間の配列及び長さはその結合能に影響しないことも確認している。そこで、アデノシンアプタマーの代わりにVEGF結合アプタマーを2つのGの6連続配列の間に挿入し、新規のGq-switchを作製した。2)については、こうして得られたGq-switchにGDHを結合させ、VEGFの添加により、そのナノ構造が変化するかを電気泳動により解析し、これが巨大な重合体を形成していることを確認した。また、3)について、この重合体を電極に固定化して、グルコース添加時の電流変化を観察したところ、VEGFを添加することにより、電流が減少することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、GDH結合アプタマーとVEGF結合アプタマーを連結し、これがナノ構造体を形成するかを解析するまでを平成24年度に行う予定だったが、平成25年度に行う予定であった、VEGFの電気化学測定間でを行うことができ、その点では予想以上の速さで研究をすすめることができた。しかし、平成24年度中に、ナノ構造体の解析をAFMで行うはずであったが、機器の準備が間に合わず、これは平成25年度に行うことになった。従って総合的に見ると、ほぼ予定通りの進度である、と言える。
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今後の研究の推進方策 |
以下の項目について研究を遂行する。 2)上述のGDH-アプタマー複合体のナノ構造が、VEGFの結合により変化するかを検討し、電極でその変化が検出しやすいように設計する。 3)GDH-アプタマー複合体を金電極に固定化し、VEGFの添加によりグルコースに対する応答電流が変化するかを検討し、電気化学的VEGF検出システムを構築する。 2)については平成24年度に引き続き検討し、特にAFMによる構造の観察を重点的に行う。 3)を平成25年度の研究の中心とする。本申請は、市販の血糖値センサーシステムを用いたVEGF検出法の開発を目的としているので、VEGFの添加によるGDH‐アプタマー複合体のナノ構造変化を、グルコースへの応答電流値の変化で検出できることが最重要である。したがって、VEGFの添加によりGDH‐アプタマー複合体のナノ構造が劇的に変化しても、それをグルコース応答電流値として検出できないと意味がない。そこで金電極上にGDH-アプタマー複合体を固定化し、VEGFの添加によりできるだけグルコース応答電流値が大きく変化するようにGq-switchを設計する。使用するVEGFアプタマーは申請者が独自に取得したもので、解離定数は30 pMであり、これまで報告されたアプタマーや抗体の中でも最も高い結合能を有する。したがって、pMレベルのVEGFを検出することが原理的には可能であり、本検出システムが開発されれば、炎症マーカーであり、かつ、がんマーカーとしても期待されている血液中のVEGFを市販の血糖値センサーシステムを用いて検出することが可能になる。VEGFアプタマーを別の疾病マーカーに結合するアプタマーに交換すれば、広汎な応用が期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当無し
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