細胞と種々の異なる相互作用をするペプチドリガンド群を搭載した細胞検査バイオチップを創製することを目標とする挑戦的萌芽研究を計画的に行った。平成25年度は、以下の研究により所定の成果を得た。1. 低濃度で細胞挿入活性を示すペプチド金ナノ粒子の開発:TatやオリゴArgなど現在のレベルではμMの濃度を必要とする細胞挿入ペプチドが多く知られているが、金ナノ粒子に固定化・集積化することにより、nMオーダーの少量で細胞挿入活性を示すペプチド群に性能発展させた。より高感度の細胞相互作用ペプチドリガンドが獲得できた。2.細胞挿入活性ペプチドの相互作用メカニズム評価:ペプチドの細胞挿入活性に関する細胞相互作用メカニズムの解析は、ペプチド群を細胞検査チップ応用するための重要な知見となる。阻害剤を用いたペプチドの細胞挿入活性分析を行った。また、細胞表層の相互作用標的候補となる硫酸化多糖類とペプチドとの相互作用を評価する研究により、ペプチド構造の違いによる細胞との相互作用の差異を明らかにするモデル研究に成功した。3.細胞検査用ペプチドチップ創製:設計したαへリックスペプチドのペプチド配列による細胞挿入活性の違いをパターン解析し、細胞ごとに特徴的な細胞フィンガープリントの作成に成功した。同じペプチドでも細胞の種類により細胞挿入活性が異なることで、様々な細胞フィンガープリントのカラーバーコードパターンを作成できる。また分化状態の異なる細胞に対しても活性の違いにより細胞分化を識別できる分析も実施した。将来、癌細胞を検査できるペプチドバイオチップを開発するための萌芽的研究成果として期待される。
|