研究概要 |
成人T細胞白血病/リンパ腫 (ATLL) は、HTLV-I(ヒトT細胞白血病ウイルスI型) の感染が原因となる T 細胞の悪性腫瘍疾患であり、HTLV-I感染者の一部が ATLL を発症する。そのため、ATLL に対する安全で効果的な新しい治療薬の開発が急務となっている。 リン脂質(DMPC) および PEG 系界面活性剤 C12(EO)25からなるハイブリッドリポソーム (HL-25)を用い、ATLLモデルマウスに対するin vivoでのがん抑制効果について検討した。 まず、ATLLモデルの作成として、T細胞、B細胞および NK 細胞の免疫機能を欠損した高度免疫不全マウス (Balb/c Rag-2/Jak3) を用い、ATLL (MT-4) 細胞をマウスの脾臓に移植し、ATLL の肝転移モデルを作成した。HL-25 の MT-4 細胞の肝転移モデルマウスへの治療効果を検討したところ、HL-25 の 14 日間の静脈投与後の肝臓重量は、未処理のコントロールおよびDMPC単一リポソーム投与群と比べ、有意に抑制された (p < 0.01)。さらに、肝臓の組織切片作成後のHE染色および免疫染色 (CD4, CD25) においても、HL-25 処理により、肝臓での MT-4 細胞増殖を顕著に抑制することが明確となった。次に、HL-25 による ATLL 移植マウスの延命効果について検討した。HL-25 を 14 日間の連続投与したATLL 移植モデルマウスにおいて、平均生存日数が 72日であった。一方、コントロールおよびDMPC単一リポソーム群では、それぞれ、57 日および 56 日であった。さらに、HL-25投与群の延命率は、125%であり (p<0.01)、顕著な延命効果が明らかとなった。(Nano Bulletin, 1, 120105-1-4, (2012))
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