極超音速機用の空気吸込みエンジンにおいて,最も重要な課題の一つである燃料と空気の混合促進を図るためには,温度,圧力,密度が変化する圧縮性流れ場における乱流混合の特性を明らかにしなければならない。最近のレーザー計測法の発達により,このような流れ場の平均モル分率や,密度とモル分率の積である濃度の瞬時値は計測できるようになってきたが,密度とモル分率を分離して測ることは未だ実現されていない。実際の燃焼は瞬時のモル分率に依存するため,その実測は極めて重要である。本研究は2種類の蛍光物質を空気流と燃料に混入して,それらをレーザー光で励起し誘起された蛍光強度を測定して瞬時の密度とモル分率の分布を求める方法を確立することを目的とする。 本研究の当初計画では,①このような計測を実現できる2種類の蛍光物質の選定とそれらの蛍光発光特性データの取得,②2種類の蛍光発光強度から瞬時モル濃度を求める手順の定式化,③実際の超音速流れ場へ適用してデータを取得,④Large Eddy Simulation結果との比較を行う予定であった。しかし,①の蛍光物質の選定にあたって,従来使用してきたアセトンと共用できる第2の蛍光物質の特性等に不明な点が多く,選定に手間取った。二酸化窒素,2ーブタノン,トルエンを候補として調査を行い,アセトンと同じ波長のレーザー光で励起でき,蛍光の波長が異なって分離が可能なトルエンを第2の蛍光物質に選定した。トルエンはアセトンの蛍光を吸収すること,および酸素による消光があることから,それらを考慮に入れた定式化を進めている。また,セル実験によりトルエン蛍光に対する酸素濃度の影響を調べている。③および④については本課題の期間中には実施に至らなかった。②の残り分および③と④については,研究分担者が今後継続して研究を進める。 上記の遅れのため,平成24年度内に研究成果の発表は行っていない。
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