研究概要 |
低ブーム超音速飛行の研究が日米欧において注目を浴びているが,従来の風洞実験では模型支持干渉が必須のため,理論の実証を行うためには飛行試験しかなく,実験機を実際に飛行させるか,バリスティックレンジ(弾道飛行試験装置)を用いて模型を自由飛行させるしかなかった。しかし,飛行実験の代替え実験技術として,磁力支持天秤装置(MSBS)が考えられる。MSBSは,永久磁石を内蔵した模型の周囲に磁場を発生させて模型を気流中に浮揚させることで,支持干渉のない理想的な状態で模型を指定した位置・姿勢で支持できる。さらにこの装置は制御状態から模型に作用している空気力も評価できる天秤としての機能も持つ。 本研究では,東北大学流体科学研究所の超音速吸込み式風洞にMSBSを適用し,模型に働く力とソニックブーム近傍場波形の同時計測を行う手法を確立し,世界各国で進められている低ブーム理論の検証を行うとともに,空力性能とのトレードオフを見極める。 このため,東北大学流体科学研究所にある超音速吸込み式風洞とJAXAより移管された10cm MSBSを改修した。超音速風洞にMSBSを導入する際に問題となるのが始動停止荷重である。この問題を克服するために,昨年度は高速・高精度なポジションセンサーを開発した。今年度は,測定部内の磁場の周波数特性改善も併せて行うことで速応性の高いMSBSを開発した。さらに,磁力支持のシミュレータを開発し,測定値との比較を行うことで,風洞始動時に模型を磁力支持可能な試験条件について考察を行った。その結果、必要な模型特性が特定でき,初めて模型を磁力支持したままで,超音速風洞の起動・通風に成功した。
|