今後の宇宙開発、宇宙環境利用の進展には,次世代の高エンタルピー流風洞が必要である.次世代高エンタルピー流風洞は,これまでに比べて高いエンタルピー流を,様々な気流成分で,より空間的に一様な気流を安定に生成することが求められている.本研究の目的は,半導体レーザーを用いて生成されたレーザープラズマによって気流を加熱する機構をもち,これらの要求をすべて満たす高エンタルピー流風洞の開発へ道筋をつけることである.このため,従来のガスレーザー方式では一様な気流の生成が極めて困難であったもことに対して,ここでは半導体レーザーアレイを用いて,リニア状ノズル内に複数のレーザープラズマを生成し,空間的に一様な高エンタルピー流の生成へ向けての研究を着手し,さらに光学診断および数値解析によって,気流のエンタルピーや化学組成などの特性を調べることを目的とした. 実験では,凸レンズによって半導体レーザーから照射したビームを集光させ,炭酸ガス,窒素、酸素などの作動ガスをレーザープラズマによって加熱した後,超音速ノズルによって高エンタルピーな気流を発生させる装置を試作した.基本的な原理はこれまでに開発してきた炭酸ガスレーザーによるものと変らないが,レーザー光の波長が大幅に短くなり可視光の波長に近くなるため,逆制動放射による電子加熱が低下する可能性もあり,プラズマ点火やレーザープラズマの維持が困難になった.このような事態に備えて,点火には電離が容易なキセノンで行い,レーザープラズマが安定した後に当初の作動ガスに切替えるという方法を試みた.その結果,作動条件によっては点火の際の高強度のプラズマ光が確認されたが,安定に維持するまでには至らなかった.数値解析の結果と総合的に判断すると,プラズマの輻射損失や熱伝導損失などが予想以上に大きく,これらの損失を補うだけの,より高出力のレーザーが必要であると推論に至った.
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