研究課題/領域番号 |
24656518
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
前川 博 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (90145459)
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キーワード | 乱流境界層 / 摩擦抵抗低減 |
研究概要 |
風洞内に置かれた壁面加熱平板乱流境界層における速度分布、温度分布および温度変動分布、さらに速度変動を計測した。速度分布はピトー管、温度分布および温度変動はそれぞれ熱電対と冷線抵抗計、そして速度変動は熱線流速計によって計測した。速度分布に対数則が現れることを確認して、クラウザーチャートを使って壁面せん断応力を計算した。まず、非加熱平板乱流境界層の摩擦係数が従来用いられてきたブラジウスの半経験則に一致することを確認した。また、粘性係数の算出にはサザーランドの式を用いた。加熱平板乱流境界層においては、主流の温度と壁面温度との比が0,94の場合と0.89の場合に摩擦抵抗係数がそれぞれ約3%と5%低下することが確認された。摩擦抵抗低減の定量的評価を行うために、主流と壁面近傍の空気密度比と粘性係数比を与え、壁面温度変化による抵抗係数の変化(ブラジウスの半経験則の乱流境界層内温度分布による補正)を調べた結果、同じ程度の抵抗低減を示す結果が得られた。ただし、温度分布をもつ乱流境界層の速度分布が等温状態の乱流境界層がともにべき乗則であらわされるため、乱流スケールが同じであると仮定している。すなわち、粘性係数と密度の変化を使って摩擦抵抗低減が達成できる範囲があることを理論によって示した。一方、圧力勾配のある乱流境界層において、加熱乱流境界層の速度分布が圧力勾配が小さいところでは共にべき乗則で近似できることを確認した後、摩擦抵抗低減を調べたが実験精度の範囲でほとんど変化を示さなかった。壁面圧力を計測して、乱流バースト現象をとらえられることを確認して、加熱平板乱流境界層における乱流構造の研究を行った。今後、乱流構造の比較を明確にする計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平板乱流境界層において、主流の気流と境界層壁面温度比が0.89の実験結果が有意な摩擦抵抗低減が得られた。しかしながら、圧力勾配をもつ乱流境界層においては有意な低減効果は得られなかった。その原因を調べるため壁面圧力変動を計測した。しかしながら、これまでのところバースト現象の特徴が見いだされたが、摩擦抵抗低減機構において状態の変化が明確になっていない。また、圧力勾配がある場合の乱流境界層についても乱流構造の変化についても明確にする必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
圧力変動計測と乱流構造の条件付き抽出を継続するとともに、シミュレーションを使った解析も行う。壁面低速ストリークや縦渦群の強さと圧力変動との関係について調査する。また、温度補正乱流境界層スケーリング理論の適用範囲を圧力勾配がある乱流境界層にも拡張するため理論とシミュレーションとの比較を行うことを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
圧力変動計測を計画し圧力センサ一式の代金が予定の金額を下回るものを購入した。海外から輸入された物品を購入したが、高速現象に対してはセンサー感度が十分ではなかったが、低速では十分実験可能であることを確認した。 摩擦抵抗低減シミュレーションと解析を行うための謝金と研究発表旅費を予定
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