研究実績の概要 |
超音速流における摩擦係数予測式を基に,温度勾配をもつ低亜音速乱流境界層における摩擦抵抗係数は,速度分布が指数則でよく近似できることから,平板乱流境界層で用いられているブラジウス則Cf=0.025(Reθ)(-1/4)からの偏差が予測式であるとして,温度比(Te/Tw)(1-〈n+1〉m)(2m+1)/(1+m) が抵抗低減の大きさであると予測した式と,温度分布と速度分布より摩擦係数を求めて計算した実験結果(実験した温度範囲では)とよく一致した.実験では,0.89<Te/Tw<0.95の範囲であったので,代入すると(m=0.25,n=2/3), 0.916<(Te/Tw)0.7<0.965 となり,この結果を速度分布から得られた摩擦係数を比較すると8.65%(x/L=50%)から2%(x/L=70%)の摩擦抵抗が低減したことを示した.速度分布からクラウザー線図法で得られた摩擦係数をプロットすると予測式と一致した.実験で得られたバルクRichardson数=-0.77×10-5で浮力効果は極めて小さい.また、 渦Dynamicsへの温度勾配の影響について検証すると,ストリークと渦構造の全体像と境界層内渦強度(速度勾配テンソルの第二不変量で定義)を,主流温度と壁面温度の比Te/Tw=0.55の高速流(浮力の影響を無視できる)において低速ストリーク・ヘアピン渦構造を観察して,類似な構造であることが確認された.速度分布はVanDriest変換をして対数則によく一致することが確認された.さらに,Reθ=2000では,Te/Tw=0.55の影響は境界層内渦強度が統計平均80%と小さくなるが,レイノルズ数の影響の方が大きく,渦Dynamicsへの温度勾配の影響は大きくないと結論した.したがって,風洞実験の温度比Te/Tw=0.9では渦力学への影響は非常に小さく予測式がそのまま使用できる.
|