研究課題/領域番号 |
24656521
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
豊田 和弘 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10361411)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 電気推進 / 超小型衛星 / 真空アーク |
研究概要 |
300V発電太陽電池直接駆動を目指した超小型衛星搭載用真空アーク推進機の開発を行った。本年度に実施した内容を以下にまとめる。 1. 金属蒸気速度計測:分子量200まで計測できる質量分析器を購入し、推進剤にアルミニウム(Al)、タングステン、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の金属蒸気速度計測を行えるようになった。どの材料においても平均速度は毎秒10km程度と変わりはなかった。 2. 金属蒸気量計測:Al、CFRPを推進剤として用い、複数回放電前後での推進剤の重量をマイクロ天秤で計測することで、1回の放電による推進剤蒸発量を計測した。Alに対し、CFRPは1桁多い蒸発量であった。平均速度が材料により変わらず、CFRPの蒸発量が多いことからCFRPでは1回の放電当たりの推力が多くなる事が予想できる。今後、推力計測を直接行っていく予定である。 3. 電圧およびコンデンサ容量を変化:コンデンサの印加電圧およびコンデンサ容量を変化させて金属蒸気速度計測を行ったが、平均速度の大きな変化は見られなかった。今後は金属蒸気量計測および推力測定を行って印加電圧および電荷量が推進性能に与える影響を調べる予定である。 4. プラズマ干渉により点火:低地球軌道プラズマ環境において放電発生装置を用いなくても自発的に放電が発生することをAl、タングステン、CFRPを用いて確認した。放電が発生する頻度はCFRPが一番高く、CFRPが推進剤として優れていることが分かった。 5. エンジニアリングモデルの製作および300V直接駆動:エンジニアリングモデルを作成し、300Vで発電太陽電池を用いて直接駆動実験を行った。基板に推進機、コンデンサ、太陽電池を取り付け、プラズマを発生させた真空タンク内に入れ外部から光を照射した。その結果、推進機が放電することが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は予定していた研究項目のうち改良型ターゲットを用いた推力測定以外は全て実施し、また来年度の実施項目として予定していた、コンデンサ容量の変化、プラズマ干渉による点火、300V太陽電池による直接駆動を前倒しで実施した。これによりおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は以下の研究項目を実施する。 1. 推力測定;推力測定用のターゲットを平板から円錐に変え、より正確に推力が計測できるようにする。また、計測した推力と、速度計測および蒸気量計測から見積もった推力との比較を行い、相互の計測の妥当性を確認する。 2. コンデンサ容量を変化させた金属蒸気量計測:コンデンサ容量を変化させて金属蒸気量を計測し、放電で流れる電荷量と金属蒸気量の関係を明らかにする。これにより推進剤の消費量を見積もることができる。 3. 300V直接駆動:最終的に推進剤を決定し、作成したエンジニアリングモデルに取り付け動作試験を実施し、エンジニアリングモデルの基本性能を計測する。また300V発電太陽電池を取り付け独立した系として推進機を作動させることで、超小型衛星に搭載可能であることを実証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
推力測定装置作成、推進剤、回路素子などの消耗品費、国内および国際学会で発表するための旅費に使用する。
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