繰返しパルスレーザー光を液体金属ターゲット(推進剤)に照射しながら推力を得る、100μN クラス小型レーザー推進機の実験実証を目的に研究を実施している。本研究では、過去に数多く研究されてきたレーザーアブレーションスラスタ(金属などの固体ターゲットに短時間大強度パルスレーザーを照射してジェットを生成するタイプ)の欠点である推進剤供給方式を抜本的に改善する試みとして、液体金属ポットにレーザーを照射する、バルブが一切不要な新しいタイプの推進機を目指す。 小型レーザースラスタ実験システムは、レーザー、液体金属推進剤を装填したターゲット、推進剤ターゲットを搭載した振り子式推力測定スタンド、ならびに、振り子の変位を測定するレーザー変位計から構成される。平成25年度は、小型レーザースラスタとレーザースラスタの推力測定に必要な推力測定スタンドの設計製作ならびに感度評価と、ターゲットの設計、ならびに、推力測定実験を実施した。外来ノイズの影響を取り除いた精密な推力測定のために、真空チャンバを防振台の上へ設置して、真空チャンバ全体を防振したレーザースラスタ実験システムを構築し、また、直径60cmの真空チャンバ内に設置されたねじり振り子式推力測定スタンドでは、マイクロニュートンクラスの高い測定感度を確認した。ターゲットについては、インジウムなどの液体金属を加熱して供給するシステムを製作し、レーザー照射の際の焦点距離制御することで液体金属をアブレーションさせ、小型のスラスタとして原理的に成立することが確認出来た。現状では~10Wのレーザー投入電力に対して、推力レベルがμNクラスと極めて小さいため、将来ミッションとして検討中のDECIGOやDPFにて利用するためには、レーザー電力に対する推力値の向上させることが必要であり、今後の課題である。
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