研究課題/領域番号 |
24656525
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
浦 環 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (60111564)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 熱水地帯 / 熱水発電 / 温度差発電 / AUV / ドッキング / 長期観測 |
研究概要 |
平成24年度は、1)高圧・海中環境下での熱水発電装置の研究開発、2)AUVのドッキングによる電力供給のためのドッキング技術と非接触充電技術の研究開発を並行して進めた。高圧・海中環境下での熱水発電装置の研究開発については、熱水活動をエネルギ源とする発電システムのプロトタイプを開発した。システムは、熱エネルギを電力エネルギに変換する熱電素子を熱交換器に取り付け、熱水と海水の温度差から電力作り出すことができる。鹿児島湾の海底熱水地帯における実海域試験では、電力密度に換算すると1平方メートルあたり89Wの電力が得られることが確認された。結果を受けて、システム改良に向けて、発電システムと電力制御システムの開発を進めた。発電システムは、現場で取得したデータに基づき、流体伝熱を考慮した数値計算を行い、熱発電システムの設計と発電性能、および熱電素子の使用量の関係について検討し、非定常RANS法を用いたシミュレーションを行い、また、熱交換器の周りに海流により起こる混合対流についてはLES法により、ウェークの予測及び流体と固体間の熱の連成の数値計算を行った。鹿児島湾での実験から測定された値と数値解析結果の比較により、鹿児島システムの精度が極めて高いことが示された。電力制御システムは、海底から噴出する熱エネルギは時間による変動があるため、熱電発電システムから最大電力を取り出すため、常に最適な電圧と電流に自動追従制する電子システムを開発し、水槽実験により熱電素子の定格出力の最大70%程度まで変換効率が向上した。AUVのドッキングシステムについては、ステーションにLEDライトを設置し、AUVのビジョンシステムにより相対位置を算出し、その結果に基づきステーションに接近してドッキングを行う航法アルゴリズムを開発、AUV「Tri-TON」に実装し水槽試験および実海域試験でその機能を検証した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
熱水発電装置のプロトタイプを開発し、実際に熱水地帯で試験を実施した。今後は、コンパクトかつ伝熱性能の高い構造の熱電発電システムを開発し、鹿児島湾や沖縄トラフなどの熱水地帯で実証試験を行う予定である。AUVのドッキングシステムについては、水槽試験だけでなく実海域での試験も実施し、その機能を検証、開発したドッキングシステムの有効性を示した。
|
今後の研究の推進方策 |
研究最終年度となる平成25年度には、初年度の研究成果を基に、熱水発電装置試作機を組み込んだ観測ステーションプロトタイプを製作する。そして、水槽試験により、ドッキングアルゴリズムを実装したAUV「 Tri-TON」を用いて、非接触充電システムの機能検証をで行う。そして、、鹿児島湾や沖縄トラフなどの熱水地帯において、開発システムの総合実証試験を行い、システムを検証することで技術的課題を明らかにして、工学的にフィードバックする。また、取得した画像データや各種計測データから、今後熱水地帯の総合的観測に必要な計測情報の検討を行う。これらの成果を基に開発した観測システムの提案を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
以下のために使用する 1. 熱電発電システムおよび観測ステーションプロトタイプの開発費用 2. 試験のための消耗品類 3. 実海域試験のための旅費
|