研究課題/領域番号 |
24656526
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
林 昌奎 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (70272515)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | シークラッタ / レーダ / マイクロ波 |
研究概要 |
平成24年度は、シークラッタを分離・抽出可能なレーダ技術を確立するためにXバンドマイクロ波パルスドップラーレーダによる現地観測を行うとともに、観測されたレーダデータを解析してドップラーシフトに関する基礎的検討を行った。また、海面におけるマイクロ波散乱を検討するための数値シミュレーションモデルを構築した。現地観測は神奈川県平塚市の海域で実施し、Xバンドマイクロ波パルスドップラーレーダにより海面からのマイクロ波散乱を計測した。マイクロ波散乱の特性として、船舶からの後方散乱強度はほぼ一定であるのに対して、海面からの後方散乱強度(シークラッタ)は海象条件によって変化する。そのため、風や波浪が大きい場合には、船舶からの後方散乱がシークラッタに埋もれてしまい後方散乱強度から船舶が識別できない場合がある。そこで、本研究ではマイクロ波の位相変化に着目し、ドップラースペクトルの解析を行った。海面はさまざまな速度成分を持つため、そこからの後方散乱はバンド幅の広いドップラースペクトルが観測される。対して、船舶からの後方散乱はドップラースペクトルに鋭いピークが認められる。このようなドップラースペクトルの特性の違いを船舶の識別に利用できると考えている。マイクロ波散乱特性を詳細に検討するため、海面におけるマイクロ波散乱を再現できる数値シミュレーションモデルを構築した。モデルでは海面を複数の成分波の重ね合わせで表現するとともに、マイクロ波散乱を表面電流法で計算することができる。平成25年度は現地観測と数値シミュレーションの結果を使ってシークラッタの分離・抽出方法について検討を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度にXバンドマイクロ波パルスドップラーレーダによる現地観測を行っていることから、研究のベースとなる基礎データは得られている。また、海面におけるマイクロ波散乱を再現するための数値シミュレーションモデルも構築できているため、今後はそれを活用して検討を進めていくことができる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の現地観測によりドップラースペクトルの基本的な特性は把握できたが、具体的なシークラッタの分離・抽出方法に関する検討は不十分である。今後は海面におけるマイクロ波の周波数変調のメカニズムについてさらに詳細に検討し、海面とそれ以外でのドップラースペクトルの特性の違いを明らかにする。この検討には平成24年度に構築したマイクロ波散乱の数値シミュレーションモデルも活用していく予定である。また、実海域のデータはさまざまなケースについて解析することが望ましいため、平成25年度も現地観測を行い、データを蓄積していくことを考えている。以上の検討からドップラースペクトルの位相特性を明らかにし、その違いを基に適切な分離・抽出方法を提案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は研究室で所有する既存の機器を用いて現地観測を行った。平成25年度は実海域のデータをさらに取得するため、マイクロ波散乱を継続的に計測するための周辺機器を購入する。また、平成24年度に構築した数値シミュレーションモデルにより広域の計算を行うには多大な記憶容量と計算時間を要する。そこで、本研究の数値シミュレーションを専門で行うためのハイスペックの計算機を購入する。
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