研究課題/領域番号 |
24656530
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
南 清和 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (30282883)
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キーワード | 防災 / 安全 / 浮体シェルター |
研究概要 |
本研究では、巨大地震発生時に襲来する大津波に対し、陸域の海岸に近い市街地における防災施設の機能を持つ大型浮体式津波シェルターの開発に関する研究を行う。この大型浮体式津波シェルターは、平時においては陸上の施設として利用される。大津波来襲時には、避難民を収容した後に到来する津波の水量に応じて浮上することで津波の力を受け流し、施設と施設内の避難民の安全を確保出来る。さらに大津波襲来後には施設そのものが避難所となり、収容した避難民や被災者に対し、自己完結型のライフラインと備蓄された食糧により一定期間、被災者がそこで過ごすことが出来る施設となる。 本研究は、提案する大型浮体式津波シェルターの基本設計と津波襲来時におけるシェルターの挙動検証を数値シミュレーションにより行う。さらに数値シミュレーションの妥当性検証のためシェルター模型を用いた水理実験を行い、得られたデータと数値シミュレーションとの比較を行う。これら研究より得られた知見から具体的な大型浮体式津波シェルターの設計を行い、その実現性についての提言を行う。 平成25年度は予定された水理実験を実施するとともに、次の研究を実施した。 ① 平成24年度に作成した大型浮体式津波シェルターの基本設計に基づき、同模型を用いた水槽実験を行った。実験は2次元波水槽を用い、津波襲来と同等とされる孤立波を用い実験を行った。浮体式津波シェルター模型の波襲来時における運動として、模型の加速度(4方向)および模型底面での変動水圧を計測した。また、津波の波速度を流速計により計測した。 ② ①より得られたデータを解析し、津波襲来時の浮体式シェルターの挙動を推定し、その挙動から大型浮体シェルターに求められる要素について再度、検討を行った。 ③ ①の結果を受けて、平成24年度に構築した数値シミュレーションプログラムの検証を行い、プログラムの修正を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における達成度合いについては次のとおりある。平成25年度は大型浮体式津波シェルターの水理模型実験を実施した。水理模型実験においては、平成24年度に実施した大型浮体シェルターの基本設計にもとづいたシェルターの模型を用いた。平成24年度に検討を重ねた実験での計測項目についてデータを収集したが、データの計測は概ね順調に推移し、解析に必要なデータが得られた。模型の挙動および襲来する津波を模擬した波の流速計測を行うことが出来た。しかしながら、模型の底面における変動水圧の計測には、水圧計測に用いたセンサーが実験中に作動不良になる等の不具合を生じたため、この点については期待されたデータ計測が行えなかった。水理模型実験を実施したことにより、得られたデータから津波襲来時における実機サイズの大型浮体式シェルター挙動の推定が可能となった点およびその挙動を推定する数値シミュレーションプログラムの改良に実験データが利用出来た点は成果といえる。 以上より、本研究における研究計画の遅延は発生しておらず、「研究目的の達成度」は概ね順調に推移していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は研究計画最終年にあたる事から、平成25年度に得られた結果を、国内外の学会等をつうじて、研究成果を発表・公表する予定である。これらの公表等を通じて、本研究に関連する専門家から意見聴取を行う。さらに必要があれば、追加的な水理実験を行い、不足していると考えられるデータの収集を行う。以上の研究成果を総まとめし、これらの総括を研究実施者一同にて行った上で、最終報告書の作成を行う予定である。
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