2011年3月11日の東北大震災以降、海洋再生エネルギーの技術開発研究が促進されるようになった。このような背景の中で、本研究の目的は、九州南方トカラ列島において黒潮を利用した海流発電の適地を明らかにすると共に、期待しうる発電量(ポテンシャル)を離島毎に算定し、離島の事情を考慮したエネルギー利用を検討することであった。 平成24年度には、海洋情報センターの黒潮流軸データセットと鹿児島大学水産学部がトカラ海峡を横断する線上で観測した流速データを解析することによって、黒潮の流路が他の海域よりも明らかに安定しているトカラ海峡は黒潮を利用した海流発電の適地であることを示した。さらに適地を絞込むために、口之島と中之島周辺で流速観測を実施し、これらの島の沿岸には流速0.8m/s以上の強い海流が流れていることを示した。平成25年度には諏訪瀬島と奄美大島周辺で流速観測を実施し、諏訪瀬島の沿岸には強い海流が存在しないことや奄美大島の大島海峡では海流よりも潮流が強いことを確認した。これらの観測結果に基づいて、口之島と中之島周辺海域が海流発電には適地であることを本研究で明らかにできた。 平成24~25年度に九州大学応用力学研究所で開発された数値モデル(DREAMS)の海況予報結果を解析し、口之島北端と中之島南端の海流のエネルギーポテンシャルがそれぞれ、年間65万kW、110万kWであり、これらの島の全世帯の一般電力をすべて賄うことができることを指摘した。平成25年度にはFVCOMを用いた潮流シミュレーションを行い、大島海峡の潮流のエネルギーポテンシャルは年間62万kWであり、奄美大島のおよそ4割の一般電力に相当することを指摘した。 平成24~25年度にトカラ列島の島々で聞き取り調査を行った結果、海潮流エネルギー利用としては製氷施設への電力供給をつよく要望していることも明らかにした。
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