研究課題/領域番号 |
24656540
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田中 剛 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 名誉教授 (00236605)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 二酸化炭素 / 地中処分 / メカノケミカル反応 / カンラン石 / 地球化学 / ガスクロマトグラフ |
研究概要 |
二酸化炭素の地中隔離における大きな問題の一つは、地層に注入された二酸化炭素とケイ酸塩鉱物の反応速度である。申請者らは、海成石灰質砂岩に含まれる炭酸塩の酸素、炭素、ストロンチウムの同位体的特徴から、その炭酸塩は、海水を起源とする重炭酸が固定された炭酸塩と、その固定時に発生した二酸化炭素が、ケイ酸塩鉱物(特に火山岩片や長石)との迅速な反応により、再固定されたほぼ等量の炭酸塩の混合物である事を見いだした。本申請研究は、後者の反応にかかわった二酸化炭素は、発生期のラジカルを含み、それゆえケイ酸塩鉱物と迅速な反応が起こったとの仮定を設定し、その当否と反応機構の確認を目的とする。 ボールミルを用いた反応実験の結果、二酸化炭素は、岩石・鉱物の破砕に伴い、苦鉄質鉱物と急速に反応する事がわかった。本研究では、カンラン石、輝石、石英、カリ長石、カルシウム長石、玄武岩、カンラン岩、花崗岩を含む、多様なケイ酸塩鉱物/岩石と二酸化炭素の反応性を様々な条件で比較検討した。岩石・鉱物試料を、二酸化炭素10%、窒素90%の混合ガスで満たされた反応容器内でゆっくりと粉砕した。容器内に残ったガス組成を逐次ガスクロマトグラフで分析し、反応した二酸化炭素の量を求めた。反応量は、粉砕の速度に応じて増加した。強力に粉砕した場合は、1時間に1molのカンラン石が0.03molのCO2と反応することがわかった。岩石の破砕に伴うメカノケミカル反応が起こっていると考えられる。成果の第一報は年代測定総合研究センター報告書に公表し、5月の連合学会で発表する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究当初の予想が的中した。とくに、二酸化炭素と岩石の反応が早かったカンラン石試料が北海道幌満の石材露頭から大量に,均質なものが採集されている事からこれからの実験あるいは工業化に向けての見通しを大きくサポートするものとなった。分析システムが共同研究者三村のラボで順調に稼働していたことも実験のスピードアップに繋がった。
|
今後の研究の推進方策 |
印刷公表を第一目標とする。連合学会で発表する内容は、昨年度成果欄に記したように、名古屋大学加速器質量分析計業績報告書に和文で報告を発表したが,更に内容を充実させて英文での報告書としたい。さらに同様に研究が進められている韓国地質資源研究所(KIGAM)を訪問し、風化反応に対する同位体そくていの応用についてうちあわせ、さらなる共同研究を推進したい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1)今年度の研究の結果、カンラン石との反応が最も早い事がわかった、今後新鮮なカンラン石の分布が資源として重要になると考えられる。名古屋近辺において、カンラン石の分布を指示するマグネシウムの地球化学図調査/公表を行う。 2)次年度の予算に余裕があれば、二酸化炭素の即時分析装置を整える。従来のガスクロマトグラフに加えて、実験に伴う,二酸化炭素増減の即時分析が可能となり、時間変化を精密に追った研究が進められる。
|