研究課題/領域番号 |
24656540
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田中 剛 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 名誉教授 (00236605)
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キーワード | 二酸化炭素 / 地中隔離 / 地球化学 / メカノケミカル反応 / カンラン石 / ガスクロマトグラフ / ボールミル / 粉砕反応 |
研究概要 |
二酸化炭素の地中隔離における大きな問題の一つは、地層中に注入された二酸化炭素とケイ酸塩鉱物の反応速度である。申請者らは、岩手県南三陸町の海成石灰質砂岩に含まれる、炭素、酸素およびストロンチウムの同位体組成から、その炭酸塩は、海水を起源とする重炭酸が固定された炭酸塩と、その固定時に発生した二酸化炭素が周囲のケイ酸塩鉱物(特に火山岩片や長石)と迅速に反応し,再固定されたほぼ等量の炭酸塩の混合物であることを見いだした。本研究は、後者の反応にかかわった二酸化炭素は、発生期のラジカルを含み、それ故にケイ酸塩鉱物と迅速に反応したとの仮定の下に、その当否と反応機構の確認を目的とする。 平成24年度は、ボールミルを用いた閉鎖系での実験の結果、二酸化炭素はケイ酸塩の粉砕に伴い、急速に減少することがわかった。カンラン石、輝石、石英、長石、玄武岩、花崗岩、カンラン岩を含む様々なケイ酸塩鉱物/岩石と二酸化炭素の反応性をなまざまな条件下で比較検討した。ケイ酸塩を二酸化炭素10%,窒素90%の混合ガスで満たされた容器内で粉砕し、容器内の残留ガスを逐次ガスクロマトグラフで分析した。反応量は、粉砕に応じて増加し、1モルのカンラン石が、1時間に0.03モルのCO2と反応することがわかった。 平成25年度は、これまでの実験結果の公表と、反応機構の調査を進めた。実験結果は、名古屋大学加速器質量分析計業績報告書に発表するとともに、地球惑星科学連合大会、日本地球化学会年会、韓国地質学会で発表し、反応メカニズムの検討に関するコメントを得た。反応生成物の高感度XRDを試みたが、出発物質となったカンラン石以外のピークは得られなかった。また、さまざまな温度での反応を行わせ、反応速度が温度に依らない事がを見いだした。今後、工業面への展開の橋渡しとなるよう、連続反応ボールミルの試作を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究当初の予想が的中した。さらに、二酸化炭素の分析システム(ガスクロマトグラフ)が連携研究者三村のラボで順調に稼働していた事も実験のスピードアップにつながった。
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今後の研究の推進方策 |
研究が予想をこえて順調に進展している事から、二酸化炭素の実隔離につながるよう、連続粉砕システムのプロトタイプを試作し、そこでの二酸化炭素反応実験にも展開を進めたい。そこでの測定には、従来のガスクロマトグラフに加えて、二酸化炭素即時分析システムの開発も試みたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者は、平成25年10月から韓国地質資源研究院においてストロンチウム同位体や、ICP-MSによるCO2結合陽イオンの化学分析(同位体希釈ICP-MS) の研究をすすめた。経費は、KOFST(韓国科学技術総連合)から支払われたので、本科学研究費からの経費支出は,初期のイオン交換カラムやテフロン器具など少数の研究消耗品に止まった。また、イタリアで開かれたV.M.Goldschmidt会議での発表を予定して、旅費を計上していたが、体調の不具合で参加できず、費用の余剰が生じた。 研究の展開は予想を上回る早さで進んでおり、次年度計画の項でも述べたように、これまでの成果を当初計画以上に発展させ、工業的な応用展開に視点をおいた、連続粉砕ボールミルに依る粉砕と二酸化炭素との反応効率を確かめる研究をすすめる。費用は、その試作とガス減圧弁、二酸化炭素測定システムの購入に充てたい。また、これまでの成果の発表を目的とする学会参加旅費としてもちいる。
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