研究実績の概要 |
二酸化炭素の地中隔離における問題の一つは、地層中に注入された二酸化炭素とケイ酸塩鉱物の反応速度である。申請者らは、岩手県三陸町の海成石灰岩に含まれる、炭素、酸素およびストロンチウムの同位体組成から、その炭酸塩は、海水を起源とする重炭酸と、その固定時に発生した二酸化炭素が周囲のケイ酸塩鉱物(特に火山岩片)と迅速に反応し、再固定されたほぼ等量の炭酸塩の混合物であることを見いだした。後者の反応に関わった二酸化炭素は、発生期のラジカルを含み、ケイ酸塩と迅速に反応したとの結論を得た。本研究では、この仮定の当否と、反応機構の確認を目的とする。 平成24年度は、岩石/鉱物を、二酸化炭素10%, 窒素90% の混合ガスで満たされたボールミル内で粉砕し、容器内の残留ガスを逐次ガスクロマトグラフで分析した。反応量は、粉砕に伴って増加し、1モルのカンラン岩が、1時間に0.03モルのCO2と反応することがわかった。 平成25年度は、これまでの実験結果の公表と、反応機構の追求を進めた。反応生成物の高感度XRD解析を試みたが、出発物質としたカンラン石以外のピークは見出せなかった。さらに様々な温度での反応を行わせ、反応速度が温度に依存しないことを見出した。 平成26年度は、韓国地質資源研究院(KIGAM)でイッテルビウム同位体の精密分析法の開発と希土類元素単体の高純度分離法の開発をすすめた。また、その開発過程で炭酸塩に含まれる微量陽イオンとしての希土類元素高確度定量を目的とした「同位体希釈ICP-質量分析法」を開発し、炭酸塩標準試料を分析した。 平成27 年度は、これまでのまとめを行い、「同位体希釈ICP-質量分析法」を地質学会と地球化学会年会で発表するとともに、本システムを現場に展開するための連続粉砕反応ボールミルを試作し、岩石鉱物と二酸化炭素の連続粉砕反応を試み、将来への見通しを得た。
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