現在、岩盤を掘削するには、主として発破を用いる方法と機械的な方法の2種が用いられているが、これらは影響領域の評価の難しさや発破・振動等による周辺環境への影響などの問題があり、現場によってはより制御された掘削技術が求められている。問題を解決する手法の1つとして、高電圧を用いた岩石の破壊現象が研究されているが、複合材料である岩石の電気伝導性や通電経路を評価することは難しく、有効な手法には至っていない。 近年、セメント原料中の成分と同じ構造をもつ物質で導電性を付与されたセラミックス材料が発明された。そこで、この材料をグラウト材と同様に岩盤中に圧入し、通電する経路をあらかじめ確定してから高電圧を印加することで、岩盤を制御下で破砕できるのではないかという着想に至った。本研究は、このような将来展望を見据えた材料の基礎研究であると同時にその材料を用いた新しい岩盤開削技術の開発をめざすものである。 研究では、導電性のセラミックス材料を作製する技術を調査・応用し、導電性を有するセメント材料の効率的な作製を試み、当該材料の導電性の経時変化や通電による温度変化について検討を行った。その結果、作製条件等を適当なものに調整することで、効率的に導電性の材料を作製することが可能となった。また、この条件で作製した試料は、大気雰囲気下で1年程度では顕著な導電性の低下は認められないことを明らかにした。研究の次の段階に必要となる材料について、おおむね良好な開発結果が得られている。 これらの成果を勘案し、最終年度(助成期間の1年延長)では、想定する手法への適用可能性を検討するため、調製した材料を用いた室内破砕実験を念頭においた、供試体の作成手法、実験の安全性等について追加の検討を行った。結果として、助成期間内に室内破砕実験の実施には至らなかったものの、検討の結果を踏まえ、今後室内実験を含めた手法の検証を行う予定である。
|