研究課題
本研究ではサーマルレスポンス試験(TRT)技術をMH層に適用することにより,MH層における熱伝導率分布の現位置測定法の確立を目指す。一般的に,TRTでは地層を加熱して温度上昇を計測するが,MH層における加熱はMHの分解につながり,自然状態では存在しない気相の発生が生じるため,本研究では,冷凍機を用いて冷却した熱媒体を坑井内に循環させて地層を冷却し,温度低下曲線より熱伝導率を推定する。本年度は半径400mmの塩ビ管に砂を充填して作成した模擬地層を用いたTRTとその結果に基づく数値計算を実施した。室内TRTでは,模擬地層を水飽和させた後に冷凍機で造成した‐10℃の不凍液をモデル外周部に循環して凍結させ,さらに-2℃程度になるまで放置して温度を均一化し,これを模擬MH層とみなした。次に模擬地層中心部に長さ50mmの同軸型地中熱交換器を設置し,これに負の熱負荷を与えた不凍液を循環して徐々に地層を冷却して,模擬地層内の温度と循環液の井戸の出入口温度を3時間測定した。その結果,冷水の循環により,モデル中心部より徐々に地層温度が低下すること,またモデル浅部では地表面の影響を受けて温度低下幅が小さいことが示された。数値計算では,地下水熱輸送シミュレータFEFLOWを用いて,模擬地層内の温度と循環液の井戸の出入口温度に関するヒストリーマッチングを行った。マッチングでは,熱交換井入り口温度を入力値とし,出口温度および地層内温度を計算した。その結果,出口温度およびほとんどの温度測定点において,実測値と計算値の良好な一致を得た。ただし,モデル中心から最も離れた点では若干のずれが見られたが,これは計算では外部境界を断熱としているが,実験では断念つが完全でなかったための影響であると考えられる。今後はこれを修正してモデルの高度化を図る予定である。
2: おおむね順調に進展している
予定していた室内試験および数値シミュレーションを実施することができたので順調と判断される。
平成25年度に実施した室内試験において断熱を強化してさらに精度の高いデータを採取し,数値計算モデルの検証を行う。数値計算モデルはフィールドスケールに拡張し,実規模のメタンハイドレート層における熱伝導率評価試験のデザインを行う予定である。
研究発表を行った学会について,他の研究費を使用して出張しており,旅費が未使用となったため。室内実験に使用する消耗品,旅費に充当するほか,研究のために雇用する技術系補佐員の人件費として使用する予定である。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) 図書 (1件)
Proc. Stanford Geothermal Workshop 2014
巻: なし
Proc. 15th International Heat Transfer Conference
Geothermal Resources Council Transactions
巻: 37 ページ: 589-594
日本地熱学会誌
巻: 35 ページ: 105-110
巻: 35 ページ: 137-148