研究課題/領域番号 |
24656553
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
古屋仲 茂樹 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理技術研究部門, 主任研究員 (60357035)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 廃棄物再資源化 / 廃棄物処理 / 環境技術 / 貴金属 / 浸出 |
研究概要 |
本研究では毒・劇物を使用しない穏やかな条件下で貴金属を溶解させることで、リサイクル現場で活用可能な安全かつ高効率な貴金属溶解技術の開発を目指している。当該年度は湿式粉砕過程における基礎的溶解特性の解明を目的として、Au、Pd、Ptのメタル粉を0.3~1.0mol/dm3の濃度の希塩酸と二酸化マンガンに混合し所定時間撹拌混合させてこれら貴金属の浸出挙動を調べた。反応容器は密閉可能なポリ容器にジルコニアボールを充填してボールミル用の回転架台に設置したものもしくは遊星ボールミルを用いた。得られた主な結果は以下の通りである。 (塩酸濃度の影響)塩酸濃度の増加に伴いAuとPdの浸出率は増加し、0.3 mol/dm3の塩酸を用いた場合に90%程度の高い値を示した。このとき二酸化マンガンの溶解率は充填量の2-3%であり、二酸化マンガンと塩酸が過剰に反応することなく、温和な条件で貴金属が溶解することを確認した。0.5 mol/dm3の塩酸を用いた場合においても浸出率の増加は見られなかった。Ptは5-6 mol/dm3の濃塩酸を用いた場合でも殆ど浸出されなかった。 (浸出時間の影響)Pdの浸出速度は極めて速く30minで浸出率が90%以上となるのに対し、Auの浸出はPdに比べて遅く、180minで浸出率90%以上となった。 (二酸化マンガンの溶解機構)塩酸による二酸化マンガンの溶解反応に比べて、貴金属浸出時には多くのマンガンの溶解が見られ2倍程度にマンガンの溶解量が増加した。浸出試験では、Pd>Au>Ptの順にマンガンの溶解量は増加する傾向を示したことから、希塩酸と二酸化マンガンによる貴金属の浸出試験では、貴金属浸出量とマンガン溶解量に相関があることが分った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はおおむね順調に進展している。その理由は以下の通りである。 当該年度は、①貴金属の基礎的溶解特性の解明ならびに②白金と活性金属の合金化処理に関する検討の2項目を掲げて研究を実施した。①については、極めて順調に進行し、上記のような興味深いデータに加えて、ボールミルを用いた場合と遊星ボールミルを用いた場合では貴金属の浸出挙動が多少異なり容器内の撹拌の強度が浸出速度に影響していること、二酸化マンガンの代わりに過マンガン酸カリウムを用いると貴金属は浸出されないこと、希塩酸に二酸化マンガンを混合して粉砕すると希塩酸だけを添加した場合と比較して粉砕ボールの摩耗が抑制されることなどが明らかになるなど、当所の想定以上の成果を得ている。一方、②については、遊星ボールミルを用いて白金といくつかの化合物を混合粉砕することで、メカノケミカル反応の誘起を試みており、今のところ重要な成果は得ていないが、浸出率向上の可能性のありそうな化合物について絞り込みを進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の検討項目とその推進方策は以下の通りである。 基礎的溶解特性の解明として、貴金属の浸出速度について遊星ミルを用いた場合とボールミルを用いた場合を比較し、混合粉砕過程における撹拌強度の影響を調べる。 白金と活性金属の合金化処理に関する検討として、前年度に引き続き有望な化合物の絞り込みを行い、合金化処理について最も優れた効果が見られた系に対して、マンガン酸化物を混合し希塩酸中において湿式粉砕することで、白金の浸出特性について調べる。 電子基板に含まれる金及びパラジウムの溶解法の検討として、破砕・物理選別等で貴金属・レアメタルを一次濃縮した試料を対象に浸出実験を行い、共存する銅やニッケルなどの影響について調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度は、実験補助とデータ整理を行う要員として契約職員1名を7~8ヶ月間雇用する予定であったが、研究代表者が客員教員を務めている大学において学生指導の一環として研究項目の一部を実施することになったため、この契約職員の雇用期間を短縮することとした。これに加え試薬等の消耗品費を大学から支弁されたことにより、助成金の一部を次年度に繰り越すことにした。 次年度は、実験作業に従事する契約職員を当該年度よりも長期間雇用することで研究をさらに加速させる。このための人件費として120万円を使用する予定である。この他に、粉砕機用品や試薬などの消耗品費として40万円、学会発表や各種調査などのための旅費として20万円、元素分析などの外注分析費として20万円を使用する予定である。
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