本研究では毒・劇物を使用しない穏やかな条件下で貴金属を溶解させることで、リサイクル現場で活用可能な安全かつ高効率な貴金属溶解技術の開発を目指している。今年度は研究機関を1年間延長し、前年度までに十分な検討ができなかった事項である①白金の浸出率の向上のためのメカノケミカル法による活性化処理、ならびに②排ガス浄化触媒中の白金の溶解について検討した。それらの実施状況は以下の通りである。 (メカノケミカル法による白金の活性化処理) 白金箔10mgに、これまで活性化剤としてテストをしていなかったマグネシウム合金(AZ91D)粉末0.5gを加え、遊星ボールミルで3時間、6時間、9時間と粉砕時間を変えて混合粉砕処理を行った後、0.5N希塩酸と二酸化マンガン、0.5N希塩酸と過マンガン酸カリウムを用いて浸出実験(3時間)を実施したが、いずれも白金浸出率は5%以下にとどまった。こうした結果から、本検討項目については、現状では困難であるとの結論に至った。 (排ガス浄化触媒中の白金族元素の溶解)新たに2種類の自動車排ガス触媒を入手し、ハニカムアルミナコート層からサンプリングした粉末の白金の含有量の分析を行ったが、所有するICP発光分析装置ではいずれの元素も検出限界値以下であった。また、上記の通り白金の活性化処理自体が困難であることからも、本検討項目については現状では困難であるとの結論に至った。 以上の検討から、本研究の貴金属溶解の手法は、金とパラジウムについてのみ顕著な効果を示すものと考えられた。
|