研究課題/領域番号 |
24656554
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
橋本 直幸 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50443974)
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研究分担者 |
向井 紳 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70243045)
佐々木 克彦 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90215715)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 熱伝導性 / 鉄系材料 / 接合 / CNT |
研究概要 |
購入(純鉄),作製(Fe-8Cr,ODS),日本原子力開発機構から提供(F82H)された接合用各鉄系試料を加工成型し、接合表面の洗浄・研磨・鏡面出しした後、接合部の組織観察(光学顕微鏡)を行い、各試料の粒径および析出物の有無を確認した。続いて、試料の一部(純鉄)を10mmx5mmx5mmに加工成形し、再び接合面を洗浄・研磨した後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてさらに高倍率で微細組織を観察し、微細析出物の有無を確認した。加えて、表面状態(粗さ)が接合性に及ぼす影響を調査するため、サンドペーパーを用いてある一定の方向に溝を付けた表面と滑らかな表面の2種類を用意した。 高熱伝導性物質として多層カーボンナノチューブ(MWCNT:10nm-20nmφ)を製造・調達し、エタノールその他で洗浄した後、事前に用意した2種類の接合面へ塗布した。ここで再びSEMによる組織観察を行い、試料表面の溝におけるMWCNTの充填率を算出した。MWCNT充填率の違う試料を数種類用意し、真空ホットプレス(VHP)を用いて接合させた結果、ある条件において良好な接合体を作製することができた。しかしながら、この接合体をディスク(10mmφ)に加工した後レーザーフラッシュ法を用いて熱伝導率測定を行ったが、接合体の熱伝導率に大きな変化は観られなかった。この理由としては、接合面に塗布したMWCNTの量が十分でないことに加え、MWCNTの配向性および連結性に問題があると推察された。また、接合界面は比較的滑らかであったが、炭化物と思われる析出物が所々存在しており、接合時の熱によりMWCNTの一部が炭化物に変化し、CNTの高熱伝導性が失われた可能性は否定できない。 MWCNTを適切に配向させたフィラー材の製造技術開発について各方面に出向いて調査し、高精度に配向させたCNTを提供を受ける確証を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度研究計画の進捗状況についてまとめると、第1四半期:接合部材の製作および調達,第2四半期:一部の接合部材(Fe)を表面処理後、組織観察,第3-4四半期:高熱伝導物質の調達(AlN, Cu)・製造(MWCNT,CNF)および接合用フィラー材の調達まで、大凡計画通り進んだと言える。さらに、一部の試料(Fe)については接合実験を実施し、適切な接合条件の精査および接合体の作製も行うことができ、次年度の研究計画に資するデータが取れたことは意義深い。加えて、高熱伝導物質の一部(MWCNT)を対象に電子線照射実験を行い、広範な温度範囲における照射下安定性についても調査している。 これまで得られた知見は、国内会議(日本原子力学会2012年全国大会)で発表された。
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今後の研究の推進方策 |
接合面に高熱伝導性物質の配向配置および塗布し、それぞれの試料を3種類の方法で接合する。接合は、真空ホットプレス(VHP),熱間等方圧加圧(HIP)あるいは放電プラズマ焼結(SPS)を用いる。それぞれの接合は京都大学,北海道大学あるいは大阪産業技術研究所で行う予定であり、技術的に問題ないことは確認済みである。いずれの接合法も固相拡散接合に適した方法であり、一般的な特徴として、母材強度と同等の接合強度が可能でありかつ直接接合が可能である。さらにSPSについては、短時間での処理が可能なため接合間の原子の拡散を最小限に抑えることが期待できる。 接合体をディスク加工し熱伝導率の測定を行う。レーザーフラッシュ法(京都大学)を用いる。直径10mm,厚さ1mmの円盤状試料にレーザ光を照射し、裏面の温度履歴曲線を解析することにより熱伝導率を算出する。熱伝導率測定済みの接合・焼結材を3mmディスクに切り出し、電解研磨により薄膜化、あるいは集束イオンビーム加工装置(FIB)により薄膜化後、透過型電子顕微鏡(TEM)および走査型電子顕微鏡(SEM)により微細組織観察を行う。 これらの実施計画の年間スケジュールを四半期に分けて以下に示す。第1四半期: Cu,CNT,CNF,AlNをランダムおよび並列配向,第2四半期:各試料をVHP,HIP,SPSにて接合,第3-4四半期:接合体をディスク加工し、レーザーフラッシュ法で熱伝導率測定後、接合界面を加工あるいは集束イオンビーム(FIB)装置により切り出し、電子顕微鏡観察する。電子顕微鏡は、主に走査型電子顕微鏡(SEM)と透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、前者では界面の表面観察および界面近傍における原子の濃度分布を調査し、後者では界面近傍における析出物や介在物の解析と微細組織を精査する。また、これまで得られた知見や開発技術などは、随時国内外会議で発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度の研究実績からH25年度の研究費執行計画を以下のように予定する。 消耗品(\300,000):高熱伝導性物質および原料の調達,接合,加工成型,熱伝導率測定,成分分析などに関連する消耗品 旅費(\500,000):国内外学会,接合機器使用,打合せなど その他(\200,000):学会参加費,機器使用料など また、H24年度の未使用額は、分担者の消耗品が発生しなかったことに加えて、関係者との打ち合わせを全て北海道大学内で行ったことで旅費がかからなかったことに依る。 この分は、H25年度の計上経費に加えて消耗品および旅費を中心に執行頂く予定である。
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