研究課題/領域番号 |
24656554
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
橋本 直幸 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50443974)
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研究分担者 |
向井 紳 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70243045)
佐々木 克彦 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90215715)
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キーワード | 熱伝導性 / 鉄系材料 / 接合 / CNT |
研究概要 |
鉄系材料を加工成型し、接合表面粗さの異なる2種類の試料を用意した。高熱伝導性物質として多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を上記2種類の接合面へ塗布した試料について真空ホットプレス(VHP)を用いて接合させた結果、ある条件において良好な接合体を作製できた。また、鋼ブロックとMWCNT、純鉄粉とMWCNT を出発材料として用い、固相拡散接合、粉末混合、圧粉体作製のプロセスによって 鉄系-MWCNT複合材を作製した場合も接合界面、焼結組織は良好であった。この接合体についてレーザーフラッシュ法を用いて熱伝導率測定を行ったが、熱伝導率に変化は観られなかった。これは、接合面に塗布したMWCNTの量が不十分でありかつMWCNTの配向性および連結性に問題があるためである。また、接合界面は比較的平滑であったが、析出物(炭化物)が存在しており、接合時の熱によりMWCNTの一部が炭化物に変化し高熱伝導性が失われた可能性がある。これにより、MWCNTから鉄系材料への浸炭を抑制する拡散障壁が必要となったため、鉄とMWCNTの間に炭素を固溶しない銅を挟み、鉄-銅-CNTの複合材の開発を念頭に、鉄系-銅複合材を作製した。銅を接合面に配置しVHPで作製した複合材は良好な接合界面を有し、接合過程における鉄中への銅の拡散は1 μm以下だった。この試料の熱拡散率は1.3倍に上昇した。また、鉄系‐MWCNT複合材を作製し鉄への浸炭を調査した結果、炭素の鉄中への拡散は1 μm程度だった。さらに、銅-MWCNT材では銅中の炭素の拡散距離は3 μm以内であった。銅の800℃における炭素の固溶限は0.04 at.%であることを考慮し、実際の炭素の銅への拡散距離はナノスケールであると推察される。 以上より、CNTと鋼の間に炭素の拡散障壁として3 μm程度の銅層を導入することで、鉄中への浸炭を抑制できると結論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度研究計画の進捗状況についてまとめると、第1四半期: 高熱伝導性材料であるCu,CNT及びCNFを接合面に適切に配置し、第2四半期:各試料を真空ホットプレス(VHP),熱間等方圧加圧(HIP)あるいは放電プラズマ焼結(SPS)にて接合または接合に最適な接合条件を取得した。なお、接合はすべて北海道大学にある既存の施設を使用して行った。第3-4四半期:接合体をディスク加工し、レーザーフラッシュ法で熱伝導率測定、さらに、必要に応じて接合界面を加工あるいは集束イオンビーム(FIB)装置により切り出し、電子顕微鏡を用いて組織観察を行った。電子顕微鏡観察には、主に走査型電子顕微鏡(SEM)と透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、前者では界面の表面観察および界面近傍における原子の濃度分布の調査、後者では界面近傍における析出物や介在物の解析と微細組織の精査を行った。以上より、平成25年度の業務は大凡計画通り進んだと言える。 また、これによって得られた知見は、国内会議(日本原子力学会2013年秋の年会、日本金属学会北海道支部講演会)および国際会議(Materials Research Society: MRS, Boston, USA)で発表された。
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今後の研究の推進方策 |
第1四半期:平成25年度に得られた最適な接合条件により、各複合材料(鉄系-MWCNT、鉄系-銅、銅-MWCNT)を作製し、各試料の接合界面近傍の炭素濃度分析、微細組織観察を行う。また、各複合材料をディスク加工し、京都大学あるいは北海道大学に既存の設備を用いてレーザーフラッシュ法による熱伝導率測定を行う。 第2四半期:第1四半期で得られた知見から、最も高い熱伝導性を有する鉄系-銅-MWCNT複合材料を提案・作製し、この試料に対してナノインデンターを用いた硬度測定、微小試験片による引張強度測定を行う。 第3-4四半期:第2四半期までに得られた知見から、高熱伝導性複合材料に対して超高圧電子顕微鏡あるいはイオン加速器を用いて粒子線照射を行い、複合材料の耐照射性(接合界面近傍の照射下安定性)について精査する。 得られた成果は、適宜国内外の学会や研究会で発表し、可能ならば開発技術について特許申請を行う。
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