研究課題/領域番号 |
24656557
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
檜木 達也 京都大学, エネルギー理工学研究所, 准教授 (60372596)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | プラズマ・壁相互作用 / ダイバータ |
研究概要 |
タングステンは核融合炉におけるダイバータ、第一壁材料として期待されているが、特に中性子照射環境下における脆化が懸念される。また、タングステンの融点は非常に高いものの、1000℃程度の再結晶温度以上では靱性は低下してしまうため、使用上限温度が制約を受けてしまう。本研究では、タングステンに対してセラミックス長繊維での強化という、セラミックス複合材料の破壊力学を取り入れた全く新しい手法により、中性子照射環境下、また再結晶温度を超えるような温度域においても優れた破壊靭性を得られる材料の開発を目的とした。 タングステン原料として、0.6μm、5μmの粉末またはタングステン箔を用いた。強化繊維として、C繊維、SiC繊維を用いホットプレス焼結を行った。焼結条件は1000-1800℃、20MPa以下の条件で試料を作製した。SiC繊維では、C被覆を施した繊維も用いた。作製した試料は引張試験で強度を評価し、微細組織、強度試験の破面は電界放射形電子顕微鏡等により観察を行った。 C繊維で強化した材料は、界面において強固な結合が形成されたものの、冷却時の亀裂の発生及び進展が起こり、本研究で用いた焼結条件では、健全な材料が得られなかった。SiC繊維で強化した材料においては、0.6μmのタングステン粉末を用いた場合、繊維束内にもタングステンが含浸し、比較的緻密な組織を形成したが、SiC繊維とタングステンの反応も進み、強度評価において、繊維の引き抜けによる延性効果を得ることができず脆性破壊挙動を示した。5μmのタングステン粉末を用いた場合、繊維束内へのタングステンの含浸が制限され、繊維とタングステンの過度な反応が抑制されたため、繊維の引き抜け効果を得ることができ、擬延性破壊挙動を示した。C被覆SiC繊維を用いた材料やタングステン箔を用いた材料に関しても、同様に引き抜け効果による延性挙動が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、タングステンの再結晶温度を超える環境や、中性子照射環境下においても延性挙動を示すセラミックス繊維強化タングステン複合材料の開発を目的としている。平成24年度は比較的緻密な材料を作製し、繊維とマトリックスの界面強度が高すぎて、延性挙動を示さないときには、界面の反応制御を行い調整し、繊維などの原料条件などの絞込みを目標としていた。それに対して、非常に緻密な材料を作製した場合に、当初懸念されたように、延性挙動を示さないため、界面の強度を制御する方法として、繊維被覆、タングステン粉末原料サイズの調整、タングステン箔の使用等の延性を出すための条件を導き出し、実際に作製温度が再結晶温度を超える条件においても、繊維の引き抜け効果により延性挙動を示す材料の開発に成功した。基礎となる作製条件と基礎データが得られたため、特許出願を行い、すでに成果が学会発表も行うことができたため、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた結果により、延性挙動を示す材料を得るためには、緻密な材料を得ることではなく、繊維とマトリックスの界面の結合を抑制することが重要であることが明らかになった。作製条件としては、繊維被覆を行うか、比較的大きい原料粉末を用いるか、箔を用いるかに条件は絞られた。強度特性を向上させるためには、理論的には界面の結合の強度を十分に低くした上で、マトリックスの強度を高めることが有効であると考えられ、これらの観点に基づき材料の最適化を行っていく。これまでに得られた繊維の引き抜け挙動では、繊維1本ごとの引きぬけによる延性効果よりは、繊維束としての引きぬけによる効果が顕著に見られるため、繊維1本の界面強度評価ではなく、よりマクロな界面挙動の評価を行うことが重要であり、強度評価に関しても、単繊維の押し込み試験ではなく、複合材料全体の引っ張り挙動、せん断挙動の評価に重点を置くこととする。本材料は1,000℃以上においても室温と同様な延性挙動を示すタングステン材料の開発を目指しているため、1,000℃以上においてアニールした材料において、破壊挙動の確認を行い、これらの条件でも延性を持つセラミックス繊維強化タングステン複合材料を開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費として、タングステン、SiC等の原料、試料を作製するためのホットプレス等の試料作製関連消耗品、1,000℃以上にアニールするのに必要な炉の消耗品、強度評価を行うための冶具やひずみゲージ等の消耗品の計上を予定している。50万円以上の備品の計上は予定していない。関連する情報を収集するため、および成果を発表するための旅費の計上を予定している。その他の経費として、作製した試料および強度試験等を行った試料の分析を行うために、電子顕微鏡等の分析機器類の施設利用料の計上を予定している。
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