研究課題/領域番号 |
24656560
|
研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
中村 浩章 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (30311210)
|
研究分担者 |
田村 祐一 甲南大学, 知能情報学部, 教授 (50311212)
久保 伸 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (80170025)
|
キーワード | 導波管 / 時間領域空間差分法 / FDTD法 / 電子サイクロトロン加熱 / ミリ波 / マイターベンド / 核融合 |
研究概要 |
初年度に引き続き、核融合プラズマにおける電子サイクロトロン加熱(ECH)システムのミリ波伝送効率の向上を目指し、電磁波伝播(時間領域空間差法:FDTD)シミュレーションシステムの開発を行ってきた。ECHシステムでは、ジャイロトロンで発生させたミリ波を伝送系により真空容器まで伝搬させ、装置内のプラズマを加熱する。この際の電磁波伝搬経路には以下の3つの要請が科せられる。まず、電磁波を発生させるジャイロトロンに本体から漏れ出る磁場の影響を受けないようにするため、装置本体から離れたところに設置する必要がある。次に、将来核融合運転の際には、装置からの中性子遮断をする必要もある。さらに、ミリ波の入射条件に応じて偏波器を導波路に設置する必要が生じることから,直線状の伝送素子のみで伝送系を構成することはできない。そのため,導波路は直線状の円筒コルゲート導波管とミリ波の進行方向を90度変えるマイターベンドの2種類の伝送素子から構成しなければならない。 研究成果として、マイターベンド用のFDTDシミュレーションコードと可視化システムを開発し導波路内の電磁波を解析した。可視化によりコルゲートが渦電流をせき止め、表面電流を抑制することがわかった。マイターベンドのミラーにおける熱分布を実験と理論とシミュレーションで比較した結果、ほぼ一致した。シミュレーションではマイターベンドでわずかにモード変換が発生し、まだら模様が確認された。タブレット端末を用いた独自のユーザーインターフェースを開発したことにより、直感的な操作による可視化と解析を行うことが可能となった。シミュレーションコードと可視化システムをマイターベンドの内部形状の設計に活かし、伝送系の伝送効率向上に役立つツールを開発することができるようになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、直線円筒コルゲート導波管のシミュレーションの計算を行い、それに引き続き本年度は、ミリ波の進行方向を90度変えるマイターベンドの計算をできるように、計画通り開発を行うことができた。さらに、本研究課題に掲げた電磁波伝搬の複雑な有りさまを可視化するためVR装置での可視化ツールの開発も行うことができた。特に、その優位さとして、マイターベンド内のでこぼこした壁面での誘起電流を、この可視化ツールを用いて調べることができた。その結果、実際に使われているマイターベンドの改良の提案を行うことができた。つまり、現在使われているマイターベンドでは、内部壁面のある部分の角を削るように作られている。しかし、本研究より、この角は削らない方が、壁電流の抑制につながるということが分かった。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究で開発したFDTDコードでは、金属壁を完全導体として扱っている。この完全導体という描像では、金属と真空との境界面の厚さがゼロ極限の金属表面上に、理想的な電流が存在するという近似で、マクスウェル方程式を解くということを行っている。それより、この理想的な電流は、表面近傍の磁場を用いて電流値を計算している。この近似の範囲では、金属内部には電磁波が侵入しないため、それにより誘起される電流の計算も行わない。それゆえ、計算が軽くなる。しかし、現実的には、ECHで用いる周波数領域では電磁波の金属への侵入長は、短いが有限である。そこで、この誘起電流の計算を行う必要がある。現時点では、この計算を行うプロトタイプのコードを開発できている。来年度は、このコードの妥当性のチェック・改良などを行い、いよいよコルゲート導波管・マイターベンドの計算を行いたい。現状では導波管は完全導体として取り扱っている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初、欧米で行われる国際会議に発表を計画したが、別の会議への出席が決まり、それに参加できなくなり、次年度使用金が生じた。また、分担者との国内での打ち合わせについても、別の会議などで直接会う機会があり、そこで本研究内容についての打ち合わせも行うことができたことも理由である。 最終年度なので、代表者・分担者とも国外での研究発表に力を入れたい。さらに、計算データが膨大になるため、記憶媒体を充実させる。さらに、本研究成果として本年度タブレット端末を使った電磁波可視化ツールを開発した。その開発を加速するため、タブレット端末などの購入を計画したい。
|