研究概要 |
減容化、安定化の効果が大きいガラス固化により放射性廃棄物を固定化して廃棄することが検討されている。ガラス固化体製造用の溶融炉の安定制御のためにはその物性値が不可欠である。本研究は高放射性廃棄物ガラス固化体に用いられる融体(以下廃棄物固化用ガラス)の熱伝導率を測定しこのデータをもとに組成と熱伝導率の関係を明らかにすることを目的とする。 本研究では、高温の酸化物系融体の熱伝導率計測として熱放射の影響や試料の電気的性質に関わらず正確な測定が可能である、研究代表者らの開発した倒置・超短時間レーザフラッシュ法により廃棄物固化用ガラスの熱浸透率(熱伝導率の平方根に密度と比熱を掛けた値)を測定した。この手法はごく薄い底面をもつ白金セルの底面にレーザパルスを照射しその後の底面の温度変化をパルス照射後10ms程度のごく短時間領域で赤外線による温度計測を行うことにより融体の熱浸透率を測定するという簡単な方法により、1800K程度の温度まで正確に測定を行うことが可能である。 本年度は廃棄物固化ガラスの模擬ガラスを測定した。組成は重量%でAl2O3 5、B2O3 14 CaO 3 CeO2 1 Cs2O 1 Gd2O3 1 Li2O 3 MoO3 1 Na2O 3 Nd2O3 2 SiO2 48 ZnO 3 ZrO2 1 、残部は酸化物換算で15%のAg, B, Co, Cr(三価), Fe, K, La, Mn, Ni, P, Pd, Pr, Sr, Rh, Ru, Te, Y, Sm を含む試料を測定した。操業に影響を与えるジブチルリン酸の濃度を5000 ppmまで変えて測定した。1000K~1400Kの範囲で熱浸透率は2.5×10~3 [W s~(0.5) /m~2 K] 程度の値となり組成依存性、温度依存性とも小さいことが分かった。
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