研究実績の概要 |
震災により破損した原子炉から放射性セシウムを吸着したゼオライトが大量に発生している。減容化、安定化の効果が大きいガラス固化により廃棄を行うことが検討されている。廃棄物ガラス固化体製造用の溶融炉の安定制御のため融体の熱伝導率を測定し、このデータをもとに組成から熱伝導率を推算する方法の確立が求められている。このため研究代表者らの開発した薄い底面をもつ白金セルの底面にレーザパルスを照射し、その後の底面の温度変化を10ms程度のごく短時間領域で赤外線による温度計測を行うことにより融体の熱伝導率を測定する倒置・超短時間レーザフラッシュ法により硼珪酸塩融体の測定を行い熱伝導率と構造に関する理論の構築を行う事を目的とした。 1)計算機内にランダムネットワークモデルを作成しこのモデルによって得られる値と実測値の比較を行った。ネットワーク分断による熱伝導率の低下は再現できたが、僅かなモディファイヤーの添加によって熱伝導率が大きく低下する傾向は説明出来なかった。2)非架橋酸素で珪酸塩錯イオンが取り囲まれているモデルの検討を行った。ネットワークモディファイヤーイオンについても線形近似でその影響を取り込んだ。実測値と計算値はCaO-K2O-SiO2-Al3O3系では良く一致した。CaO-Na2O-SiO2-Al3O3系ではネットワークモディファイヤーの多い領域で一致しなかった。3)同一モル比のCaO-SiO-M2O系(M=Li,K,Na)の測定を行った。その結果次の点があきらかとなった。i)CaOは熱伝導率を高くする効果がある。ii)Li,Na,Kの熱伝導率を低下させる効果は、イオン半径の大きいほど大きい。 またこのほかに、硼酸塩系としてB2O3-CaO-SiO2や、実際の廃棄物固化のために実用されている硼酸塩系を模擬した試料について測定を行った。これらについても今後さらに検討を実施する。
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