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2012 年度 実施状況報告書

原子力ムラの構造分析から合意形成論へ

研究課題

研究課題/領域番号 24656566
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関東京工業大学

研究代表者

澤田 哲生  東京工業大学, 原子炉工学研究所, 助教 (20235469)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード原子力ムラ / 原子核物理 / 日本学術会議 / 茅・伏見提案 / 癒着構造 / 合意形成論
研究概要

当該研究は、1)原子力ムラの構造分析、2)原子力研究開発の合意形成論からなる。本年度は、1)に関して、大学における原子核工学研究・教育の発祥に着目し、京都大学、大阪大学、東京工業大学に関して調査を行った。調査の内容は、主に文献調査と聞き取り調査である。このなかで、基礎物理、特に原子核物理の発祥(明治時代のはじめ)から終戦前後までの学者系統を分析した。さらに、調査対象とした各大学の原子核工学専攻・科、原子力工学専攻・科の初期形成・発展過程において、原子核物理学者が果した役割を分析した。
なかでも、原子力ムラの発祥において大きな役割を果たした日本学術会議における大学教育研究の意義付けおよび位置づけについて調査分析した。本年度の研究で明らかになったことは、以下の3点である。
1)原子力ムラの発祥において原子核物理の果した役割は限定的である。2)学術会議における〝茅・伏見提案〟成立のプロセスにあって、原子核特別委員会および原子力特別委員会の委員長であった物理学者坂田昌一およびその協力者である武谷三男が極めて重要な機能を果たした。しかしながら、このプロセスで、〝茅・伏見対坂田・武谷〟という対立構造が形成されていった。その結果、両者の間に決定的な溝を生み、その後原子核物理の学者らは、一部を除いてが原子力の研究開発に協力することはなくなった。3)各大学の原子力関係講座の教授達の系統樹を見る限り、ごく近年(2000年頃)までは、極めて閉鎖的かつ自家醸造的人材育成に陥っていった。以上の3点が、多様性のない価値観および人的交流のなかで、いわゆる〝原子力ムラ〟の閉鎖性と産学官間での癒着構造の基盤を形成したとの仮説を得るに至った。次年度は調査対象の幅を広げるとともに、当該仮説の検証に挑む。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1)初年度の研究においては、数カ所の大学における原子力ムラの形成背景と過程の分析および教授を中心とした系統樹の作成を目標としていた。これはほぼ達成できた。
2)また原子力ムラのもたらす癒着構造に関しては、その基盤となる要因をほぼ見いだすことが出来た。その検証については、次年度以降の課題とする。
3)2)の検証においては、原子力ムラの重要な研究者、および基礎物理(特に原子核物理、素粒子論)の研究者の協力(聞き取り調査等)が極めて重要だが、その協力基盤を構成できた。
4)原子力研究開発にかかる合意形成論を展開する上で重要である『原子力と物理』乖離の初期因子が掴めた。
以上の4点をもって、おおむね順調に進展していると判断する。

今後の研究の推進方策

1)初年度の調査分析、主に大学等の研究機関における原子力学者の系統樹の作成と分析をより広範囲に実施する。
2)原子力ムラの初期の形成過程に関与した研究者、例えばいわゆる各大学の〝原子力1期生〟などへの聞き取り調査を行い。当時の研究教育現場の状況、主な関心、雰囲気、就職先状況等から、原子力ムラ癒着状況の基本構造を解明する。
3)合意形成論に向けた実践的フィールドを形成し、合意形成の試み(試験)を実施する(数回程度)。このなかでは、合意形成に向けて意味のある情報提供、コミュニケーションからダイアローグへの動機付け、エンゲージメントの可能性等を探求する。

次年度の研究費の使用計画

旅費、謝金などに未使用額が発生した。その主な理由は、1)身近な研究機関(つまり都内の大学図書館等)における調査に重点をおいた(旅費の発生が少ない)、2)出張調査が当初予想よりも効率的に進んだことにある。
未使用額については、次年度研究の幅を広げ深度を増して、研究計画遂行のために使用する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2012

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 原子力ムラの構造分析から合意形成論へ(1);概要2012

    • 著者名/発表者名
      澤田哲生
    • 学会等名
      日本原子力学会2012年秋の大会
    • 発表場所
      広島大学、東広島キャンパス
    • 年月日
      20120919-20120921

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公開日: 2014-07-24  

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