研究課題/領域番号 |
24656568
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
緒方 良至 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70185502)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 液体シンチレーション計測法 / 可搬型 / 純ベータ核種 / ガードカウンタ / 放射性ストロンチウム / トリチウム / 福島原発事故 / バックグラウンド |
研究概要 |
可搬型液体シンチレーションカウンタ開発のため、鉛などの重量物での遮蔽ではなく、より軽いガードカウンタを用いたバックグラウンドの低減策を提案した。ガードカウンタとして、価格面および加工のしやすさから、プラスチックシンチレータを用いた。ガードカウンタとしての形状に加工したプラスチックシンチレータおよび液体シンチレーション計測用の光電子増倍管(Photomultiplier Tube; PMT)をデータ収集装置に接続して検出器として組み上げ、純β核種32-P、14-C、3-Hで基本性能を調べた。ガードカウンタとしての一定の効果はあったが、プラスチックシンチレータは、γ線に対する計数効率が低いため、充分な効果を得ることができなかった。γ線に対する計数効率がより高い素材を検討する必要がある。また、本実験で採用した液体シンチレーション計測用のPMTは、受光面積が小さすぎたため、3-Hの低エネルギーβ線に対する計数効率が芳しくなかった。ガードカウンタの素材および形状を検討するとともに、液体シンチレーション計測用のPMTには、より受光面積の広いものを採用する必要があることが分かった。 検出器の開発と同時に、福島県沿岸部の魚介類の採取を行った。放射性物質による汚染が拡散して個々の試料における濃度が低くなる懸念があったため、早い段階で魚介類や海水など等の試料を採取した。これらは、まず、高純度Ge半導体検出器で放射性セシウムなどのγ核種を測定した。 いくつかの学会に参加し、魚介類や海水などにおける放射性核種の汚染の状況に関する最新の知見を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プラスチックシンチレータをガードカウンタとして加工し、液体シンチレーション計測用のPMTと組み合わせて、検出部分を作成した。ガードカウンタ用のPMT、液体シンチレーション計測用のPMTに高電圧、アンプ、同時計数回路、逆同時計数回路および波高弁別装置を接続し、信号の収集ができる状態とした。純β核種である32-P、14-C、3-Hの計測が可能であることを確かめた、また、バックグラウンドを測定し、ガードカウンタの効果を確認した。しかし、ガードカウンタとしての効果が予想より低く、また、3-Hなどの低エネルギーβ線の計数効率が低かった。この原因として、プラスチックシンチレータのγ線に対する計数効率が低いことおよび液体シンチレーション計測用のPMTの受光面積が小さすぎたことが上げられる。検出部分の改良が必要であることが分かった。このため、90-Srの測定までには至らなかった。 一方、福島県沿岸部の放射性ストロンチウム測定試料として魚介類を採取した。これらの試料は、放射性セシウムも含有しているため、まず、高純度Ge半導体検出器で、放射性セシウムなどのγ核種の計測を行った。
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今後の研究の推進方策 |
液体シンチレーション計測用のPMTをより受光面積の大きなものにする。また、ガードカウンタの素材および形状を検討する。これらの改良の後、32-P、14-C、3-Hの計測およびバックグラウンドの計測を行う。その後、放射性セシウムの計数に対する影響を評価し、また、90-Srの計測を行う。90-Srの測定では、事前にストロンチウムを化学的に分離する必要があるため、迅速・簡便な分離方法も併せて検討し、実証する。 一方、福島県沿岸部で試料を採取し、実試料に対して、本検出方法が適用できるか否かを実験的に検証する。 他方、関連学会に出席し、魚介類へのストロンチウム蓄積量の評価に関する最新の情報および福島第一原発からのトリチウム放出量に関する情報を得る。また、本研究成果を学会で報告し、論文の執筆を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
より受光面積の大きいPMTの購入(~20万円)、γ線に感度が高いガードカウンタ(~10万円)、消耗品の購入(~10万円)、試料採取のための出張および情報収集・成果発表のための学会出張旅費(~30万円)その他(~10万円)を予定している。
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