研究課題/領域番号 |
24656571
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
有馬 立身 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60264090)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 放射率 / 融点 / 核燃料 |
研究概要 |
核燃料の融点を放射温度計を用いて高精度で測定するには、温度測定と同時に放射率の補正が必要となる。本研究ではレーザー加熱を利用した無容器法による融点測定を提案しており、超高温(3000℃程度)の状態で、且つ高速(~数ms)で放射率も測定する必要がある。放射率の測定原理は、放射温度計と同波長の光を加熱と同時に断続的に試料に照射し、その際、試料からの反射光強度(放射率=1-反射率)を検出することである。 本年度の具体的な研究実施内容は以下の通り。反射光を効率よく集める装置として、放射温度計の測定波長である近赤外域で性能を発揮するインフラゴールド積分球を選択した。試料の溶融径、光チョッパーとの幾何学的位置を考慮し、レーザーダイオード光照射機構を設計・製作した。反射光を高速・高効率で測定するために、InGaAsを受光素子とする高速動作型検出器を設計し、合わせて積分球へ取り付けるためのジグ、フィルタを設計・作製した。最終的にそれらをシステム化した。 本研究の成果は、SICE2012にて「Measurement of Surface Melting Temperature with High-speed Pyrometers by Containerless Method」、および2013年日本原子力学会春の年会にて「レーザー加熱を利用した無容器法による核燃料の融点測定;背景および開発計画」として報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射温度計の性能に適合した積分球として、インフラゴールド積分球を選定した。放射温度計での検出波長が近赤外領域に入ることから、その波長域で反射率が高く、また波長による変化が小さいことを主な選定理由とた。反射光の検出には、近赤外光を効率よく且つ高速で測定可能であり、装置自体がコンパクトであることを実現できるものとして、浜松ホトニクスとの技術相談の上、InGaAs PINダイオードおよび15kHz高速アンプを選択した。検出器を積分球に装着する機構およびフィルタをシグマ光機と技術相談の上、選定・設計および製作した。放射率(=1-反射率)を測定するには、放射温度計の検出波長と同じか近い波長を持つ光の積分球内での反射光強度を測定する必要がある。YAGレーザーによる試料の溶融域がΦ1mm程度であること、放射率測定用レーザーダイオード(LD)と積分球の間に光チョッパーが挿入できることを考慮し、200mm-300mm離れたところからLD光をスポット径0.3mm程度にして試料に照射できるように、Thorlabsの技術者と相談の上、LD光(1625nm、シングルモード)をファイバを通して積分球に導入できるよう光学系を設計した。
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今後の研究の推進方策 |
積分球を使った放射率測定を金属材料および酸化物材料に対して行う。室温において、標準試料(黒ガラスまたは炭化珪素)を測定する。この時、放射温度計での検出波長領域に含まれる1625nmのレーザー光を、光チョッパーにより断続的に試料に入射させ、積分球内で散乱される反射光の強度を計測する。光チョッパーの周波数は熱停留時間(数ms)の間に数10個の方形波が生じるように調整する。放射率は、入射光が試料に対して不透明な場合、1-反射率で求まることから、放射率が既知な標準試料の反射率を測定することで反射光の強度(パルスON-OFF時の差)との関係が決まる。その後、標準試料を融点が未知な試料に替え、室温および溶融状態での反射光強度を測定する。室温での放射率は参考となる値も数多く測定されていることから、装置の精度が推定できる。いくつか試料を換えながら、放射率と融点の関係を評価する。 試料を融解させる場合、セラミックス試料では、レーザー照射による急速加熱により、しばしば破損が起こる(割れ、砕けなど)。そのような試料の破損は、本測定での短所であり、これを克服する必要がある。また、本測定法では試料の溶融体積を大きくできないことから、融点における熱停留状態の持続時間が従来のものに比べても極めて短い(~数ms)。従って、熱停留状態を長く持続することが、精度の向上にもつながるものと考えられる。そこで、加熱・冷却条件を可能な限りマイルドにするために、ジュール加熱および別レーザーによる予加熱の効果を確かめる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は本研究を遂行する上で是非とも必要となる重要装置(高額備品)を購入した。次年度は、光学装置の調整のために必要な分を消耗品として購入する。融点測定には試料が必要であり、金属材料およびセラミックス焼結体の作製に必要な原料粉末の購入にあてる。その他、測定中の雰囲気置換のための不活性ガスおよび還元ガスの購入にも使用する。 研究の成果報告のために、国内学会への旅費に使用する。また、研究打合せのための旅費としても使用する計画である。
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