核燃料の融点は3000Kと極めて高く、現在主流となっているタングステンカプセルに封入し融解する方法では、試料とカプセルが反応するため、PuO2をはじめとする反応性の高い物質では正確な測定ができなくなる欠点があった。本研究は無容器法によりその欠点を克服しようとする試みである。無容器法とは、試料の一部を瞬時にレーザー融解し、その冷却曲線に出現する熱停留点を数10ms以内に融点として決定する方法である。温度測定には放射温度計を使用することから、放射率補正が避けられない。そこで、本研究では、積分球を使って熱停留点と放射率を同時に測定するシステムを開発した。 昨年度までに測定システムを構築し、本年度はその動作を確認した。放射率の測定は、放射温度計の検出波長に近い波長を持つプローブ光を試料に照射し、そこで発生する反射光を積分球を使って検出するものである。放射率は、キルヒホッフの法則(放射率=1-反射率)から決定される。あらかじめ反射率の既知な標準試料を測定し、反射光強度と反射率の関係を調べておく。続いて未知試料の反射光強度を測定し、すでに求めておいた反射光強度と反射率の関係を使って、反射率すなわち放射率をmsの応答速度で測定できることを確認した。 黒ジルコニア(融点2800K程度)に対して、単色放射温度計(但し、室温での放射率補正)から求めた融点と、積分球を使わない二色温度計での融点は数%の差はあるものの、おおよそ一致する結果となった。しかしながら、この差は融解時の放射率の必要性を示唆している。そこで、最終的にレーザー融解と放射率測定を同時に行ったが、融解時の強烈な輻射光による信号が反射光の測定に影響することが判明した。今後この問題はプローブ光の波長以外の輻射光成分を抑えることで解決していく予定である。
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