研究課題/領域番号 |
24656572
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
杉山 亘 近畿大学, 原子力研究所, 講師 (90510165)
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キーワード | 廃棄物処理 / 超臨界水 / 亜臨界水 / 液体燃料生成 |
研究概要 |
グリーンケミストリーを鑑み、今年度は昨年度に比べエネルギーを可能な限り低く抑える研究を実施した。具体的には、温度を低くすること、すなわち、昨年度は450℃の超臨界水で研究を実施し、今年度は370℃の亜臨界水で研究を実施した。昨年度の結果では、難燃性物質であるゴム手袋の液体燃料生成率(油分転化率)は約40%であったが、今年度の結果では、約80%の油分転化率となった。このことから、ゴム手袋を油分に転化するには超臨界水よりも亜臨界水の方が得策であると結論した。 一方、難燃性物質であるポリ塩化ビニルについてであるが、油分転化率からすれば、超臨界水が優れていることが、今年度並び昨年度の研究結果から結論される。しかしながら、今年度の研究である亜臨界水により、ポリ塩化ビニルに結合している大部分の塩素は反応後の水に存在することが判明した。すなわち、亜臨界水によりポリ塩化ビニルに結合している塩素を脱離できることが今年度の研究により明らかとなった。 また、上述の難燃性物質から得られた油分(液体燃料)について、元素分析を実施した。その結果、中東並び中国の原油と遜色ない炭素量と水素量が存在することが明らかとなった。このことから、一切の添加物を含まない超臨界水並び亜臨界水により、難燃性廃棄物から原油相当の液体燃料は生成すると結論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
一切の添加物を含まない難燃性物質を超臨界水あるいは亜臨界水により原油相当の液体燃料が生成することが明らかとなった。さらに、特筆できることととして、上述の超臨界水あるいは亜臨界水により、難燃物物質のカテゴリーよりもさらに厳しい不燃物のカテゴリーとされるポリ塩化ビニルについては、脱塩ができ、良質な固体燃料となり得る可能性まで本研究は発展した。このことから、ポリ塩化ビニルのような液体燃料になりにくい物質を良質な固体燃料に転化し、国際社会をリードできる研究の一助となると考える。 本研究は10立方センチメートルのバッチ式反応容器というラボレベルの研究である。しかし、大規模な焼却炉でポリ塩化ビニルを焼却廃棄させることは、配管の腐食並び公害の原因となることは明らかである。超臨界水処理であれば、塩素を反応容器内に閉じ込めることができることを証明したことにな る。今後の国際社会問題を鑑みれば、グリーンケミストリーの1つの具体的な例であると研究代表者は考える。
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今後の研究の推進方策 |
「研究業績の概要」並び「現在までの達成度」にも記載したが以下の研究を最終年度の締めくくりとして実施したい。 まずは、難燃性物質であるポリ塩化ビニルについて示す。今年度は370℃の亜臨界水でポリ塩化ビニルから脱塩することが判明したが、エネルギーを可能な限り使用しないという観点から、さらに温度を下げ、ポリ塩化ビニルから脱塩するために適切な温度条件を確立したい。塩素をポリ塩化ビニルから脱離させ、良質な固体燃料を生成させることが期待できるものと考え、来年度、挑戦したい。さらに、反応後の水に含まれる塩化物イオンは純粋な塩化物イオンなのか、あるいは複雑な化学形を示す塩化物イオンなのか同定を試みる。 次に、反応容器の腐食について示す。ポリ塩化ビニルを分解した後の水には、ニッケルイオンが存在することがICP発光分析により明らかとなった。このことから、反応容器(ハステロイC-276:ニッケル基合金)の腐食について検討する。 最後にゴム手袋について示す。これまでの実験ではチオックス(千代田テクノル製)を使用していた。今後、チオックスの主成分である天然ゴム(ラテックス)を使用し、可能な限りエネルギーを抑え、原油相当の液体燃料が生成することに挑戦する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ポリ塩化ビニルの実験に手間がかかる一方、試薬が高価ではなかった。さらに、実験に際し多くの先生方から助言を賜り、予備実験(古典的な化学実験)、近畿大学に所有されている装置、あるいは、簡単な実験装置により研究を進捗することができた。特筆すべき内容は、「難燃性廃棄物の飛躍的減容と液体燃料生成に関する技術開発」と称した具体的「システム開発」であることから、可能な限り必要とされる現場に適用されるように研究代表者は検討し考えなければならない。現場の作業員にとって「難しい操作をする必要がないこと。」が優れたシステムである。 しかしながら、来年度は検討中ではあるがクロマトを購入し、科学的に優れたシステムであることを証明したい。 研究に必要なパーソナルコンピュータが不足しているため、平成26年度と同様に20万円程度のパーソナルコンピュータを1台購入予定 である。ポリ塩化ビニルについて、超臨界水あるいは亜臨界水後に得られた固体にどの程度塩素が含有しているのか東北大学金属材料研究所にて元素分析を実施する。また、昨年度と同様に、超臨界水あるいは亜臨界水反応により得られた難燃性物質由来の油分が原油相当の液体燃料であることも併せて、東北大学金属材料研究所にて元素分析を実施する。 ポリ塩化ビニルの実験により、反応容器が腐食することが平成25年度の実験で明らかとなった。このため、反応容器一式を購入する予定である。
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