過酸化水素など、一切の添加物を含まない超臨界水あるいは亜臨界水により難燃性廃棄物を飛躍的に減容処理するとともに難燃性由来の油分、すなわち、液体燃料を得ること(液体燃料生成)を目的とした研究であった。 今回の研究では、難燃性廃棄物の例としてゴム手袋と塩化ビニルを用いた。その理由は、ゴム手袋については現状の原子力発電所の運営では焼却処理実施をしているものの日々増加しているためであり、塩化ビニルについては新基準に適合した原子炉とするために必要な工事等を実施した際に古い絶縁ケーブルなどには塩化ビニルが使用されており、今後、廃棄されることになるためである。 今回の研究から、難燃性廃棄物を超臨界水あるいは亜臨界水により処理することにより、ゴム手袋については、ほぼ完全に減容することができた。さらに、ゴム手袋処理後に得られた油分は、反応容器に封入したゴム手袋の約80%(重量比)となった。ゴム手袋処理後の油分を、IRの結果から、原油相当であることが判明した。ゴム手袋が原油相当になる化学変化について詳細な研究を実施できなかったが、研究に使用した反応容器の材質がニッケル基合金のハステロイC-276であることから、ニッケルは水素付加の触媒となることなどから、今回の実験条件が有機物に水素付加しやすい環境にあったものと推察した。 一方、塩化ビニルについては、減容処理率が約50%であった。処理後の水の液性はpHは約2の酸性であった。ICP発光分析により、この水からニッケルイオンを検出した。このことから、塩化ビニルの分解に伴い発生する塩化物イオンにより、反応容器が腐食すると考察した。 グリーンケミストリーを鑑み、ゴム手袋処理後の水の再利用の可能性に関する研究を実施した。その結果、再利用した水を用いても、ほぼ完全に減容が可能であるとともに、得られた油分のIRの結果から原油相当であると考察した。
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