研究課題/領域番号 |
24656576
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野村 政宏 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (10466857)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | フォノニック結晶 / 熱電変換 / フォノニクス |
研究概要 |
本研究の目的は、シリコンフォノニック結晶ナノ構造における熱伝導の物理的理解と熱電変換材料としてのポテンシャルを探求することである。本年度は、熱伝導制御に効果的なフォノニック結晶ナノ構造の設計とプロセス手法の確立、熱伝導測定システムの構築を行う研究計画であった。 有限要素法により、様々な一次元フォノニック結晶ナノ構造について、バンドダイアグラムを計算するプログラムを開発した。また、エアブリッジ状の周期300 nmの一次元シリコンフォノニック結晶ナノ構造の作製プロセスを確立した。本構造は、最も細い部分が60 nm、厚さは145 nmであり、長さは100 umと充分な長さがあるため、フォノニック結晶ナノ構造を熱的に独立させることが可能で、フォノニック結晶ナノ構造の熱拡散率を光学的に測定可能な構造を作製することができた。 熱伝導測定システムについては、時間分解熱反射測定系をほぼ完成させることができた。本実験系により、光パルスで加熱した時刻から任意の時間だけ遅れた時刻に別の光パルスを入射して、その反射光強度を測定することで、フォノニック結晶ナノ構造部を通じた熱の散逸に関する情報を得ることができる。そのデータからフォノニック結晶ナノ構造の熱伝導率を得ることができる。そのための解析プログラムも開発した。 研究計画とは別に、新しいシミュレーションも行った。フォノニック結晶による熱伝導制御の可能性を確認するため、シリコンにおけるフォノンの平均自由行程を計算した。その結果、熱伝導に寄与するフォノンのうち90%以上が100 nmより長い平均自由行程を有することがわかり、本研究で提案するフォノニクスに基づいた熱伝導制御の可能性を支持する理論的根拠をより明確に得ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度の当初研究計画は、熱伝導制御に効果的なフォノニック結晶ナノ構造の設計法と構造作製手法の確立、熱伝導測定システムの構築を行う計画であった。 設計法については、有限要素法を用いたシミュレーションプログラムを開発し、達成した。また、構造作製手法についても確立し、熱伝導率測定を行うための所望の一次元フォノニック結晶ナノ構造を形成することができ、達成した。熱伝導測定システムの構築については、ほぼ完成しており、自動測定プログラムも構築したため、達成した。したがって、当初計画の目標をすべてクリアした。 当初の計画以上に進展していると評価した理由は、当初計画を全てクリアしたことに加え、計画になかったシミュレーションを行うことで、本研究の理論的根拠をさらに明確に示すことができたことによる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、構築した熱伝導測定システムを用いて、様々なフォノニック結晶ナノ構造における熱拡散率を測定し、構造の違いによる熱伝導制御効果の違いを明確に観測することで、フォノニクスによる熱伝導制御が可能なことを示す。また、熱電変換材料としてのポテンシャルを示すため、半導体ナノ構造の異なる部分をn, p型にドープして直列構造とし、ドープ濃度を熱起電力が最大となるように最適化することで、シリコンフォノニック結晶ナノ構造の熱電変換能を評価する。以上により、研究目的である、ナノ加工技術とフォノンバンドエンジニアリングによるシリコンの熱電変換応用への可能性とポテンシャルを示すことを目指す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
熱電変換効率の測定に必要な、電気部品や光学部品の購入と、学会発表旅費に使用する予定である。
|