研究課題
挑戦的萌芽研究
ルシフェラーゼレポーターは感度・定量性・簡便性に優れ、遺伝子発現の活性を測定する技術として生命科学の多岐にわたる分野で利用されている。特に、この技術を生細胞に適用し、さらにゲノム解析のスケールにまで大規模化した「生物発光リアルタイム測定システム」(JST先端計測分析技術・機器開発事業、平成17~21年度、チームリーダー:石浦正寛)は、次世代シークエンサーの登場で新時代を迎えた遺伝学において鍵となるシステムである。しかし、ルシフェラーゼを用いたこれまでのレポーターアッセイは、専らプロモーターの活性に着目したものであった。近年めざましく理解の進んでいる転写後制御の重要性や、ゲノム配列解読後のタンパク質の動態の理解の重要性の観点から、今後はタンパク質の量的変動を正確に測定できるレポーターが不可欠である。我々は、予備的な実験から緑藻クラミドモナスの時計タンパク質ROC15のC末端にホタルルシフェラーゼを融合させたレポーターを作製し、このタンパク質の特徴である、タンパク質量のリズミックな変動と、光照射後の極めて早い分解を生物発光として測定できることを発見していた。本年度は、ROC15に加え5 つの時計タンパク質(ROC40、ROC55、ROC66、ROC75、ROC114)のレポーター遺伝子を作製を作製した。時計遺伝子の停止コドン直前にルシフェラーゼのコード配列を挿入することで、時計タンパク質のC末端にルシフェラーゼを融合したレポーターを発現させた。できるだけ本来の遺伝子機能を損なわないよう、時計遺伝子のゲノム断片にルシフェラーゼを組込み、そのDNA断片を野生株の核ゲノムに移入した。その結果、ROC114を除く4つの時計遺伝子を用いたレポーター遺伝子に関して、生物発光を示す形質転換体を得た。
2: おおむね順調に進展している
当初計画したレポーター株5種のうち、4種の作製に成功した。既に作製していた1種と合わせて、十分な種類のレポーター株が得られたため。
本年度は、ほぼ予定通りの成果を得た。よって、来年度は当初の計画通り、得られたレポーター株の生物発光が、時計タンパク質の発現パターンを正確に反映していることを確認する。具体的には、生物発光リアルタイム測定と時計タンパク質のウエスタンブロット解析を行い、それらの結果を照らし合わせる。また、時計タンパク質は、量の変動の他にも翻訳後修飾や複合体形成、核局在/DNA結合などの様々な特徴を示すが、一義的に量の変化を反映していることを確認する。
次年度の研究費は、上記の計画遂行のため、主に以下の消耗品類の購入に充てる。遺伝子実験用試薬:クローニング試薬(PCR酵素、制限酵素、プラスミド抽出キット、コンピテントセルなど)および発現解析関連試薬(RNA抽出キット、Klenow酵素、ラベリングキット、ハイブリダイゼーション試薬など)を含む。タンパク質実験用試薬類:抗体、タンパク質抽出試薬、アフィニティカラム類、プロテアーゼ阻害剤、アクリルアミドゲル、ウエスタンブロット関連試薬、ルシフェラーゼアッセイキットなど。培養用器具:フラスコ等のガラス器具類、シャーレ・ウェルプレートなどのプラスチック器具類発光基質:ルシフェラーゼの基質類(主にルシフェリン、場合によってはデカナール、セレンテラジン)
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
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