研究課題/領域番号 |
24657006
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
関口 睦夫 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (00037342)
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研究分担者 |
関口 猛 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60187846)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | RNA / 酸化 / 遺伝子発現 / タンパク質 / 発現異常 / 酸化グアニン / 酵素 / ストレス |
研究概要 |
グアニンの酸化体である8-オキソグアニンはシトシンのみならずアデニンとも結合するので、この酸化塩基がRNA中に存在すると異常なタンパク質がつくられる。それを防ぐために生物は、ヌクレオチドレベルとRNAレベルで働く少なくとも2つの機構を持っている。前者の機構で主役を演じるのは、大腸菌ではMutT、哺乳動物ではホモログであるMTH1などであるが、今回私達はこの過程には別のタンパク質GMKが重要な働きをすることを見出した。GMKは大腸菌にも哺乳動物にも存在する必須タンパク質で、このタンパク質はATPを利用したGMPをGDPに変えるが、酸化されたGMP(8-oxoGMP)に対してはほとんど作用しない。これによってMutTによって8-oxoGTPから生じた8-oxoGMPの再利用が阻止されるので、GMKとMutTの働きはリンクしているとみなすことができる。我々はさらにこのような機能を欠くGMKの変異体を分離することに成功した。このようなGMK変異体では遺伝子発現に異常が起こることを我々は示したが、哺乳動物細胞にこのような変異が出現すると老化の促進が起こる可能性がある。 上記の研究と平行して、酸化RNAを排除するシステムについて研究を進めた。ここでは酸化グアニンを持つRNAに特異的に結合するタンパク質(AUF1など)を同定し、その生物学的役割を明らかにするためその遺伝子を欠損する細胞株の樹立を進めている。このような細胞株やマウスの系統を樹立することによって、酸化RNA損傷と老化の関連をより明確にすることができると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は「損傷を受けたRNAを排除する新規の機構」を解明することを目的としているが、その機構の一部をなすRNA前駆体レベルの機構については、これまでの我々の研究で、その全貌がほぼ明らかにされたと考えていた。そこで主役を演じるMutT/MTH1の作用機構をほぼ解明できたからである。しかし研究を進めるうちに、MutTの働きは機能的にそれと対をなして働くGMKが正常に機能してはじめて達成されるものであり、さらにRNAポリメラーゼが誤塩基対合をきたす8-オキソグアニンのRNAへの転入を抑えていることが明らかになってきた。このような事実が明らかになったのは、我々が進めてきた遺伝的相補性を利用した遺伝子発現の制御の実験系によるものであって、この方法の開発の意義はきわめて大きいものがあると考えている。この方法を用いて、DNA合成や細胞膜に関わるこれまで予想もされなかったタンパク質が遺伝子発現に関わることが明らかになりつつあり、グローバルな制御機構を明らかにすることができると考えている。上記の研究は、大腸菌モデル系を用いてなされたものであるが、ここで見出された遺伝子は哺乳動物でも同様な機能を果たしていると考えられるので、この成果を生かして次年度には哺乳動物細胞へと研究を展開したい。
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今後の研究の推進方策 |
上に述べた如くRNA前駆体レベルの制度維持機構について予想外の進展があったので、この研究を高等生物の老化制御に結び付けるべくさらに研究を進める。マウス胚を操作して該当する遺伝子を改変した動物を作出して、老化の過程やその帰結を調べるのが当面の進め方である。ただ哺乳動物を用いた場合、個体レベルの解析には長時間と多額の費用がいるのでより扱い易い線虫などのモデル系での解析についても検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は160万円の研究費を予想しているが、そのうち50万円を研究分担者の関口猛に配当したい。
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