研究概要 |
様々な精神的ストレスを受けているヒトでは、テロメアの長さが短いことが、報告されている。テロメアの長さは寿命や代謝制御に関連することが示されているので、この結果は、「精神的ストレスが寿命や代謝制御にも関連する」ことを示唆している。しかし、様々なストレスがテロメアの長さを調節するメカニズムが全く不明なため、「ストレスがテロメアの短縮を引き起こす」との認識は、まだ一般には受け入れられていない。私達は最近、ストレス応答性のATF-2ファミリー転写因子が、ストレスによるテロメアの短縮に関与することを示唆する結果を得た。そこで本研究では、ATF-2ファミリー転写因子を介した、ストレスによるテロメア短縮のメカニズムを明らかにし、「ストレスがテロメアの長さを制御すること」を証明することを目的とした。 まず、野生型 MEFs(mouse embryonic fibroblasts)をTNF-a処理するとテロメアが短縮するが、ATF-7 KO MEFs ではテロメア短縮が見られないことを確認した。次に、ATF-7がテロメアに局在するメカニズムと、ATF-7を介したテロメア短縮のメカニズムを明らかにするため、ATF-7と結合する因子を精製し、Ku複合体を同定した。Ku70とKu80から成るKu 複合体はテロメラーゼ(TERT)をテロメアにリクルートする役割を持っている。一連の解析の結果、ATF-7, Ku複合体、TERTは複合体を形成し、テロメアに局在することが示された。さらにTNF-a刺激で、ATF-7がストレス応答性キナーゼp38でリン酸化されると、ATF-7とTERTがテロメアから遊離し、テロメア短縮が引き起こされることが示された。
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