本研究では、各種微生物の地球規模での分布を、Genbank等のデータベースを利用して収集し、地域(local)における微生物多様性の制限要因を探索することを目的とした。2年の研究期間中に、土壌微生物系および雪氷上の藻類群集について、全球的な分布の概要を把握することができた。特に、藻類群集については、世界的に移動分散するグループと地域的な集中を示すグループの両方が同じ系統内に散在していることが示され、分散により分布を広げる戦略とその場に留まりそこで継続的に繁殖する戦略がそれぞれとられていることが分かった。この結果は、生物の群集形成機構において注目を集めている、移動分散とその場の環境(ニッチ)の相対的な重要性を検討する上で、非常に重要な発見になるだろう。つまり、近縁な藻類群集に属する類似した種であっても、移動分散能力に差が見られ、これが、群集形成に大きな影響を与えている可能性を示唆するからである。 これらの成果は、生態学会で発表すると共に、現在、学術論文として投稿の準備を進めており、2014年の5月中にMicrobial Ecology誌に投稿予定である。 今後、本研究で培ったノウハウを活用し、その他微生物群集についても、データベースの探索と現地調査を組み合わせ、地域における生物群集の形成機構についてのデータを集積し、それらの間に、どのような共通性と異質性が見られるかについて、より広い分類学的なスケールにおいて、検討を進める基盤が整ったと言えるだろう。
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