研究概要 |
発光細菌は、沿岸から外洋の海水などから広く分離される、一方で海洋中に無数に漂うマリンスノー(海中懸濁物:主に海産生物の糞や死骸から構成される)の約70%が発光細菌の活動により発光している事が報告されており、発光細菌の生態とどの様に関係しているのかが注目されている(Andrews et al., 1984)。本研究では、「発光細菌はマリンスノー上で発光することにより高次生物(魚等)に認識・捕食され、腸管内で増殖しそのニッチを維持している」という仮説を立て、発光細菌発光色の詳細な解析を行うことで仮説の検証を行うことを目的とする。 平成25年度は、発光色を変化させる蛍光タンパク質を持つと予想される発光細菌5株および持たないと予想される3株、合計8株のゲノムシーケンスを実施し、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質と発光色の関係の解析を行った。 具体的には、ゲノムデータから蛍光タンパク質の有無を調べ、蛍光タンパク質およびルシフェラーゼ遺伝子の系統関係の比較を行った。また、ルシフェラーゼ遺伝子の系統と、発光細菌発光色の関係を調べた。ゲノム未決定の株に関しては、新規に設計したルシフェラーゼ遺伝子検出用プライマーを用いて遺伝子配列を決定し、比較を行った。その結果、発光細菌の放つ光の色はルシフェラーゼ遺伝子の系統によって概ね決定していること、発光スペクトルの極大波長が480 nm以下にあるものは細胞内蛍光タンパク質を持つ事が分かった。これまでに蛍光タンパク質を持つ発光細菌は3種でしか報告されていないが、本研究により蛍光タンパク質を持つ種が新たに見つかった。現在、ゲノム解析と平行して、それらの発光細菌が分離された海洋環境と発光色の関係およびルシフェラーゼ遺伝子系統との関係を解析中である。
|