研究実績の概要 |
嶋田と大林夏湖(嶋田研特任研究員)は、連携研究者・若本の開発した1細胞培養計測系での大腸菌内でのプロモーター活性を、蛍光シグナルを利用して調べた。その結果、一部細胞で、増殖に伴いSOS応答とDNAの組替えに関わるrecA 遺伝子(以下recA)が強く発現し、recAを強く発現する細胞(以下「高recA発現細胞」)は細胞サイズの大きい伸長細胞であることを確認した。この結果から、細胞の密度増加とともに高recA発現細胞が増える「密度依存仮説」をたて、バッチ培養系で特定時間培養後のクローン細胞を捕集し、recA発現量(レポーター遺伝子GFPの輝度)と細胞伸長(細胞分裂に関わる別のレポーター遺伝子の輝度)の解析を行った。液体培地での4時間、6時間、8時間、11時間培養後の高recA発現細胞は、それぞれ、3/217, 1/202, 5/233, 27/212(高recA発現細胞数/全細胞数)であった。また伸長細胞は10/217, 2/202, 47/233, 35/212(伸長細胞数/全細胞数)であった。伸長かつ高recA発現した細胞は8時間後で2細胞、11時間後で3細胞であり、4時間、6時間後には観察されなかった。以上の結果から、(1)伸長細胞頻度は培養時間とともに増加、(2)高recA発現細胞頻度も培養時間とともに増加したことから「密度依存仮説」が支持された。一方、(3)伸長かつ高recA発現の細胞数はわずかであり、必ずしも両者の相関は強くなかった。この結果は伸長状態と高recA発現の相関が1細胞計測系とバッチ培養系で異なる可能性を示唆している。寒天培地を用いた1細胞計測系では、細胞内で高いrecA発現が持続する間は細胞分裂が抑制されて伸長が続き、細胞内のrecA発現が弱まると分裂を再開する様子が観察され、高recA発現と細胞伸長の間には関連性があることが推測された。
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