複数地域での野外調査や飼育下での繁殖生理状態の観察から、アカネズミの繁殖期の地域変異を確認した。餌の影響よりも、環境温度の影響で、このような多型が生じている可能性が示唆された。一方、室内での休眠実験の結果から、秋-春繁殖集団の個体でも、春-秋繁殖の個体同様、雌雄ともに冬季適応を示すことが分かった。つまり、通常の光周性を持つにも関わらず、繁殖期が環境条件に応じて適切な時期へとシフトしていると考えられる。繁殖期の多型は表現型可塑性で維持されている可能性が高い。また、オスの精子が熱に弱いとの一般論に反し、暑熱がメスの繁殖生理に強い影響を及ぼすことが、季節応答に雌雄差が生じる主要因だと考えられる。
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