研究課題/領域番号 |
24657019
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
大橋 瑞江 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (30453153)
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研究分担者 |
池野 英利 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (80176114)
岡田 龍一 徳島文理大学, 薬学部, 研究員 (20423006)
木村 敏文 兵庫県立大学, 環境人間学部, 助教 (00316035)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 生態 / 環境 / 社会性行動 / 物質循環 / エネルギー / ミツバチ / 炭素 |
研究概要 |
ミツバチは熱帯から亜寒帯まで幅広い範囲で分布し、数万個体からなる大規模コロニーを長期にわたって維持している。ミツバチの高い環境適応能力は、集団採餌や旋風行動などの様々な社会性行動によって支えられており、ミツバチコロニーは独自のエネルギー循環システムを構築していると予想される。そこで本研究では、コロニーのエネルギー循環、環境動態、個体行動を同時観測するシステムを構築し、ミツバチのエネルギー収支-環境-行動の関連を示すモデルを構築することを目的とした。 本年度は、セイヨウミツバチの専用観察巣箱を用いて、(1) コロニーへの炭素流入量、(2) コロニーにおける炭素貯留量、(3) コロニーからの炭素流出量、の3項目を測定するためのシステムを試作した。巣箱に各種センサを取り付け、計測データはコンピュータに連続的に送信、保存されるようにした。巣箱内のミツバチコロニーのCO2消費量を見積もるため、観察巣箱のCO2拡散速度を実験的に求めた。巣板をビデオカメラでモニタリングし、行動解析データの取得を可能とした。また、実際に巣箱は巣板を1枚入れて、10か月にわたってミツバチを飼育した。また、ミツバチの行動・環境・エネルギー収支を関連づけるモデル式を構築するために、基礎となる二つの既発表モデル、すなわちSchmickl andCrailsheim(2007)のミツバチコロニーにおける個体数変動のモデル式及びOkada et al. (2010)のミツバチの行動モデル、のC言語への移植を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画はおおむね達成できたと判断される。今年度の目標は、(1)コロニーへの炭素流入量、(2)コロニーにおける炭素貯留量、(3)コロニーからの炭素流出量、3つの計測を可能とするシステムの構築、であった。(1)については、巣箱の出入り口にカメラを取り付け、帰巣ミツバチ数をカウントできるように工夫した。(2)については、巣箱の重量変化の自動計測、巣板画像の撮影システムを構築した。(3)については、巣箱にCO2濃度センサ、温湿度センサ、気圧センサを設置し、巣箱内から巣箱外へのCO2拡散速度をあらかじめ求め、巣箱のCO2濃度の変化から巣内のCO2放出速度を計算できるように工夫した。これらのシステム構築は、すべて簡易型の観察巣箱を自作して行った。結果として、10ヶ月にわたり、ミツバチコロニ-を飼育しながらセンサ-を動かし、デ-タ取得が可能であった。また、当初の予定には入っていなかったが、今後、ツバチの行動・環境・エネルギー収支を関連づけるモデル式を構築する際のベースモデルとして使用を予定している二つの既発表モデル、すなわちSchmickl and Crailsheim(2007)のミツバチコロニーにおける個体数変動のモデル式及びOkada et al. (2010)のミツバチの行動モデルについて、それぞれ別言語で記載されていることが明らかとなったため、これらのモ デルのC言語への移植を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は試作した観察巣箱を用いて、ミツバチ―コロニーにおける炭素の流入、流出、貯留速度の評価、およびそれに伴うミツバチの社会性行動の変化について、実際のデータ取得を目的とする。(1) 炭素流入、貯留、流出量:流入量については、1時間につき5分間、帰巣ミツバチ数をビデオ画像から手動により計測する。採餌ハチを採取し、花蜜と花粉の採集バチの割合、1匹のミツバチが収穫する花蜜と花粉の重量)を解剖して求め る。花蜜と花粉の炭素濃度の測定は化学分析会社に依頼する。炭素貯留量は実験開始前に巣箱重量を測定する。夜間の巣板画像からミツバチ領域を抽出し、ミツバチ1個体あたりの画像領域から個体数を求める。ミツバチ1個体の重量と個体数と掛け合わせることでミツバチ重量を算出する。毎時間の炭素貯留量を積算して、一日の炭素流入量を求める。炭素放出量については、温度は1時間の平均値を使用する。 (2) コロニー内外環境の測定:各種センサのデータは1分毎にロガーに記録されており、データ取得後1日の平均値を求める。サーモグラフィー画像は1時間につき1回撮影する。姫路市の気象台から、毎日の平均気温、降水量、天候などのデータを取得する。 (3) ミツバチが活動する6-17時にかけて1時間につき5分間撮影した映像を解析する。個体行動については、Kimura et al., (2011)の画像解析プログラムを用いて巣内のミツバチの行動を、育児・巣内清掃・採餌・旋風行動・不明・静止などに分類する。同時に全個体数に占めるそれぞれの行動の割合を求める。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費:当該年度に試作した観察巣箱は試作品であったため、これまでの巣箱の半分のサイズであり、素材もプラスチックを木枠によるものであった。そのため、当初の予算よりも安く上げることが可能であった。しかしこの予備実験に用いた観察巣箱は簡易版として作成したため、次年度は巣箱の素材を変更、増強したデザインとして本実験に備える必要がある。安定的に長期間、ミツバチを飼育しながらデータを取得するため、餌が足りない場合の給仕システム、各種センサーの設置方法と設置場所などを新たに検討し、必要な工具、材料を購入する予定である。また、温湿度センサー、CO2濃度センサー、気圧センサー、風速センサーのメンテナンス、ミツバチの干渉による故障・不調の際の新規購入なども予定している。 旅費:当該年度は、研究立ち上げの年だったため、兵庫県及び香川県で2-3回のミーティングを予定していたが、研究分担者の意欲的な取り組みのため、ミーティングの開催は1回にとどまった。全体ミーティングに必要な旅費の他、学会参加費の支出を予定している。学会参加については、9月に行われる動物学会(岡山)、2月に行われるミツバチセミナー(兵庫)、3月に行われる生態学会(広島)、情報処理学会(東京)などでの発表を予定している。 人件費・謝金:次年度は膨大なデータを取得し、解析をしていく予定となっているため、計測補助、データ解析補助、プログラム開発補助など、各種作業の補助にかかる人件費を支出する予定としている。なお、繰り越し分は全て人件費および謝金に使用する予定としている。
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