研究概要 |
カリキンは植物が燃焼した際の煙に含まれる物質で、山火事後に休眠覚醒する植物の発芽誘導物質として発見された。カリキンはストリゴラクトンと同様にメチルブテノライド骨格を持ち、シロイヌナズナをはじめとする様々な植物の種子発芽を促進する。一方、ストリゴラクトン非感受性変異体を用いた研究から、ストリゴラクトンと似て非なる新たなホルモン様物質の存在が示唆されている。本研究ではこの新たなホルモン様物質とカリキンの関係を明らかにすること、同物質を欠損するシロイヌナズナの変異体を単離することを目標とする。 これまでの研究から、カリキンはα,β-ヒドロラーゼファミリータンパク質であるD14LIKEを介して働くと考えられる。つまり、d14like変異体はカリキン非感受性となる。本年度はまず、カリキンがシロイヌナズナに存在するかどうかを結論付けるため、昨年度に引き続きLC-ESI-MS/MSによる分析を行った。しかしながら、内生物質であることを支持する結果は得られなかった。これまでに、D14LIKE経路の突然変異体はd14likeそのものしか得られていない。そこで、新たなホルモン様物質の欠損変異体の取得を目的とし、d14like変異体と表現型が類似した変異体の選抜を行った。胚軸および葉柄の徒長を指標に約120,000のM2種子スクリーニングした結果、d14likeと表現型が酷似した10個の新たな変異体を得た。相補試験の結果、これらのうち5つはd14like変異体のアリルであることが示された。残りの5つのうち少なくとも3つは新規変異体であると考えられ、今後詳しい解析を進めていく予定である。
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