研究課題/領域番号 |
24657025
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
片岡 博尚 東北大学, 学術資源研究公開センター, 協力研究員 (30108568)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | オーレオクロム |
研究概要 |
研究材料とした褐藻ハロプテリス(Halopteris)の成長は青色光(LED,460 nm, 14時間明・10時間暗)によって維持されるが,赤色光(LED, 660 nm) では,維持されず,数週間で枯死する.青色光の下で成長した藻体の形態は白色光下で成長したものとなんら変わらないので,深海での本褐藻の成長と繁殖は,海底に届くであろう青色光のみで行われていると想定できる.そこで,光の方向により細胞分裂面の向きが制御されている可能性を調べようとしたが,この藻は基質に定着したハプテラから半球状にきわめて緩慢に成長しつつ,分岐した枝を伸ばすので,短時間内の光の効果を捉えるのは,不可能であった. インキュベータ内の直径6cmのペトリ皿中で,一次元的,あるいは2時限的に成長し,その成長速度も数時間で検出可能な褐藻を探索し,シオミドロ(Ectocarpus)に注目した.シオミドロは,最近そのゲノム情報が国際的プロジェクトとして公開された.そのゲノムには BLAST検索により,我々がはじめて発見同定した青色光受容体AUREOCHROMEを保存していることも確認した.シオミドロの藻体は数cmで成熟し生殖するので,光形態形成反応が見つかれば,解析可能であろう.多くの研究者がゲノム解析に参加しているのは不利ではあるものの,形態異常や成長の早い株の情報がいち早く入手できるかも知れない. そこで,神戸大学の系統保存施設KURCISから,ゲノム解析に用いられた物と同一の株を入手し,Halopterisと平行的に培養を開始した.しかし,現在までのところ,光強度や波長を種々に変えた条件で比較実験をするに十分な量の藻体は得られていない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究材料としてきた褐藻ハロプテリス(Halopteris)の成長が青色光により促進することは確認したが,その成長速度が極めて遅く,しかも,成長に伴い藻体が分岐しながら半球形になるため,青色光の入射方向と細胞分裂,並びに,光屈性の有無を調べる当初の研究計画には不適な材料であることがわかった.そこで,別途,同じく海産褐藻のシオミドロ(Ectocarpus)の光形態形成の解析を始めた.シオミドロは最近ゲノム情報が公開され,多くの研究者が参加しているという不利な点はあるものの,最新情報が入手できる利点がある. 光強度と波長を数種類に変えた条件でその成長と形態形成を解析するためには,比較的多量の材料を用意する必要があるが,現在まだ必要量に達していない.共同研究者との提携を模索している.
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今後の研究の推進方策 |
シオミドロ(Ectocarpus)の当該株を更に神戸大学のKURCISに注文中である.培養液組成,濃度,培養温度と明期長を改変することにより,最適な培養条件を探り当てる.青色光LED単独照査装置と赤色光LEDと青色光LEDの混合照射装置を購入する.これも現在注文中である.青色光のみが成長に有効であることは確認済みなので,どのような可視的変化が青色光で誘起されるかを早急に見つけだす計画である. さらに,十分な量の藻体が得られれば,青色光で特異的に発現が増加,あすいは減少する遺伝子を発見するために,transcriptome解析を計画する.発現量が変化する遺伝子の中にAUREOCHROMEによって制御されるものが存在するはずである.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり,平成25年度請求額と合わせ,平成25年度の研究遂行に使用する予定である.
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