研究課題/領域番号 |
24657033
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
深尾 陽一朗 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特任准教授 (80432590)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | プロテインフォスファターゼ / リン酸化ペプチド / HPLC / ゼニゴケ / PP2C |
研究概要 |
ホスファターゼタンパク質によるタンパク質の脱リン酸化反応は植物の様々な生理現象に関わっているが、実際にホスファターゼの基質が特定された例は少なく、個々の地道な研究から得られる情報に止まっている。本研究では遺伝的冗長性の低い苔類ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)を用いて各ホスファターゼが脱リン酸化する基質を網羅的に特定し、植物における普遍的な脱リン酸化反応機構を包括的に理解するための基盤情報取得を目的としている。 このために先ずはHPLCを用いたリン酸化ペプチドの精製系の確立に取り組んだ。HPLCはAgilent Technologies社の1290 Infinityを用いた。リン酸化ペプチドを精製するためのHPLCラインおよびメソッドの組み立てはAgilent Technologies社の技術スタッフの協力を得て行った。リン酸化ペプチドを保持するためのカラムは選択的吸着能に優れている二酸化チタンを骨格構造としたGL Science社のTitansphere Tio HPLCカラムを用い、効率良くペプチドを保持しかつ回収できることを確認した。この検証には市販のカゼインリン酸化ペプチド(alpha-casein:Michrom BioResources社)を用いた。さらに生体サンプルから得たリン酸化ペプチドの精製を行った。複数の生体サンプルを用いて検証した結果、イネ培養細胞からプロトプラスト化したサンプルからタンパク質を抽出した場合において、最もリン酸化ペプチドの精製度が高くなることを確認した。リン酸化ペプチドの精製度合いの確認には抗リン酸化セリン抗体を用いたウエスタンブロットによる検出と質量分析により行った。現在までのところ、おおむねリン酸化ペプチドは本法により精製度高く回収されることを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の軸となるリン酸化ペプチドの精製系を確立するに当たり実験材料の取り扱いの簡便さからイネ培養細胞を用いたが、HPLCを用いた精製系についてはほぼ確立できたため、この点においては予定通り順調に進展している。しかしフォスファターゼタンパク質のクローニング及び変異体作成などが遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
シロイヌナズナにおけるホスファターゼタンパク質のうちPP2Cファミリーは75個存在する。ゼニゴケゲノムに対してBLAST検索すると8個のホスファターゼタンパク質が存在したことから、ゼニゴケにおいてはPP2Cに関しても遺伝的冗長性の低いことが確認している。現在はこれらホスファターゼタンパク質に関してクローニング及び変異体作成を進めている。変異体ができ次第、初年度に確立したHPLCを用いたリン酸化ペプチドを精製の実験系を用いて野生型と変異体の比較からホスファターゼタンパク質の基質の同定作業を行う。また大腸菌でホスファターゼタンパク質を発現し、精製したホスファターゼタンパク質を野生株由来の全タンパク質と反応させる。ホスファターゼ処理あり・なしで同定されたリン酸化タンパク質を比較することで、各ホスファターゼが標的とする基質を絞り込む。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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