研究課題/領域番号 |
24657039
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
林 誠 基礎生物学研究所, 高次細胞機構研究部門, 准教授 (50212155)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 種子 / オルガネラ / オイルボディ / オレオシン / 植物油脂 / バイオ燃料 / バイオディーゼル / バイオマス |
研究概要 |
本研究の目的は、申請者が作出したオレオシン-GFP形質転換体を利用して、オイルボディの形成機構やオレオシンの細胞内輸送機構の解明することにある。本年度は以下の3つの研究を推進した。 (1)オレオシン-GFP 形質転換体の詳細な蛍光観察を行った。その結果、本形質転換体を用いることで、種子のみならず、さまざまな細胞内に存在するオイルボディのライブイメージングが可能であることを明らかにした。そこで、さまざまな条件検討を行い、暗所芽生え4日目の植物のオイルボディを高解像度実体蛍光顕微鏡観察することで変異体のスクリーニングを行うこととした。 (2)オレオシン-GFP 形質転換体の種子を変異源処理した後、十分な規模のM1 植物を育てM2 種子を得た。 (1)で決定した条件に基づき、オレオシン-GFP 形質転換体とは異なるGFP蛍光を示すM2 個体をオイルボディ形成不全変異体として選抜した。これまでに、GFP蛍光が弱くなるもの、オイルボディが大きくなるものなどいくつかの変異体を単離することに成功した。 (3)GFP蛍光が弱くなる変異体は3系統単離できた。遺伝学的解析の結果、これらは同一遺伝子に変異を持つことが明らかになった。そこで、これらのうちの1系統についてマップベースクローニングを実施し、原因遺伝子がXRN4であることを明らかにした。この遺伝子は、ポストトランスクリプショナルサイレンシングの抑制に関わっている。xrn4変異型では、トランスジーン転写産物であるオレオシン-GFP mRNAからsiRNAが作られていた。このsiRNAはオレオシン-GFP mRNAと内在性オレオシンmRNAのサイレンシングを誘導し、結果としてこれらの変異体ではオレオシンおよびオレオシン-GFPともに減少することが判明した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変異体のスクリーニングが順調に進み、そのうちの1つについては原因遺伝子の特定まで終了した。これらの進展は、ほぼ当初の計画どおりでる。また、本萌芽研究で提案した実験技術についてはほぼ確立できたと言える。
|
今後の研究の推進方策 |
オイルボディ形成不全変異体のスクリーニングや原因遺伝子の特定の技術的な問題がないことが明らかになったので、当初の予定通り、変異体の大規模スクリーニングを行い、オイルボディ形成不全変異体を網羅的に集める。得られたオイルボディ形成不全変異体については順次原因遺伝子の同定を行う。 バイオインフォマティックスの情報や、オイルボディ形成不全変異体の詳細な表現型をもとに原因遺伝子の機能推定を行う。変異体の表現型の検討項目としては、電子顕微鏡によるオイルボディ、小胞体、ペルオキシソーム、プラスチドなど脂質の合成・貯蔵・分解に関係するオルガネラの詳細な形態観察、種子や植物体の各器官における脂質含量、脂質中の脂肪酸組成、などがあげられる。さらに、オレオシンをはじめカレオシン、ステロレオシンなどのオイルボディ膜タンパク質の存在の有無やこれらのタンパク質がオイルボディ膜ではなく、小胞体膜や細胞膜などその他の膜に間違って局在していないかどうかについても詳細に検討する。原因遺伝子の発現様式を詳細に調べるために、定量PCR 法によるmRNA の定量や原因遺伝子のプロモーターとGFP からなるキメラ遺伝子を導入した形質転換体を作成し、GFP 蛍光観察を行う。 これらの当初計画に加えて、初年度に同定したxrn4変異のサプレッサーを同定したいと考えている。上述のようにXRN4はトランスジーンのポストトランスクリプショナルサイレンシングを抑制していると考えられる。そこでは、xrn4変異体に再度変異減処理を施し、後代でGFP蛍光が強くなる変異体をスクリーニングしていく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年4月1日より、基礎生物学研究所から長浜バイオ大学に移動する予定である。本研究の遂行に必須な大型備品は、ほぼ基礎生物学研究所から長浜バイオ大学に移管できる見通しであるが、一般試薬やガラス器具、プラッスチック器具など実験の遂行に必要な消耗品類は全くなく、1からそろえていく必要がある。次年度の研究費のほとんどは、こうした消耗品費に当てる。
|