研究課題
本申請代表者らのグループは、環境ストレスにより発現誘導され、かつ、センス鎖RNAと共発現するアンチセンスRNAの解析を続けている。最近、上記アンチセンスRNAは、タンパク質をコードする領域からRNA依存性RNAポリメラーゼ(RDR)により生成し、細胞内でセンス鎖RNAと2本鎖RNAを生成することを見出した。本研究では、上記アンチセンスRNAの生成経路がsmall RNAの生成経路と直接リンクしているかどうか解析した。具体的には、rdr1/2/6の3重変異体と野生型から17-30塩基のsmall RNA画分を抽出し、次世代シーケンサーを用いて解析した。Small RNAをゲノム上にマップしたところ、タンパク質をコードする発現遺伝子領域にもmRNAの分解産物と考えられる低分子RNAが存在していた。そこで、野生型とrdr1/2/6の3重変異体を比較して変異体でsmall RNAの蓄積量が減少する領域をRDR1/2/6依存性のsmall RNA生成領域とみなした。その結果、意外にもRDR1/2/6に依存してアンチセンスRNAが生成する領域とRDR1/2/6依存性のsmall RNA生成領域はほとんど一致しなかった。アンチセンスRNAは主にタンパク質をコードする遺伝子領域から生成しているのに対して、small RNAは主にトランスポゾン領域から生成していた。以上の結果から、RDR1/2/6はこれまで報告済みのsmall RNA生成経路とは異なる新規な経路で、センス鎖RNAを鋳型にして環境ストレス誘導性のアンチセンスRNAを生成している事が明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的は、本申請代表者らのグループが同定した環境ストレス応答性のアンチセンスRNA(センス鎖RNAと共発現する)の生成経路がsmall RNAの生成経路と直接リンクしているかどうかを解析する事である。本申請代表者らのグループは、上記アンチセンスRNAの生成にRNA-dependent RNA polymerase (RDR)が関与する事を見出している。本研究課題の実施により、次世代シーケンサーを用いた解析から、RDR1/2/6はこれまで報告済みのsmall RNA生成経路とは異なる新規な経路で、センス鎖RNAを鋳型して環境ストレス誘導性のアンチセンスRNAを生成していることを明らかにした。
本申請代表者らのグループは、環境ストレス条件下でセンス鎖RNAを鋳型にしてRDRによりアンチセンスRNAが生成する事を見出している。しかしながら、上記アンチセンスRNAの環境ストレス応答、耐性における機能は不明なままであり、今後関与する因子の変異体を用いて環境ストレス条件下での表現型解析を行う予定である。また、アンチセンスRNAの生成には他の因子も関与する可能性が考えられ、それら因子の同定および機能解析も進める予定である。
次世代シーケンサーを用いたRNA-seq解析から得られたデータに関して、Real-time RT-PCRによる確認実験を行う。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 4件) 備考 (2件)
Bioinformatics
巻: 28 ページ: 929-937
10.1093/bioinformatics/bts065
G3
巻: 2 ページ: 487-498
10.1534/g3.111.001362
http://www.csrs.riken.jp/jp/labs/pgnrt/index.html
http://www.csrs.riken.jp/en/labs/pgnrt/index.html