研究課題
平成26年度は,フクレサルオガセUsnea bismolliusculaとハコネサルオガセU. hakonensisの湿潤時と乾燥時の遺伝子発現の違いについて,これまでに得られた2850の遺伝子配列をBLASTX検索によって約半数を特定した.さらにGOを用いた解析によりこれら遺伝子を関連する代謝経路ごとに分類した.湿潤条件と乾燥条件ではタンパク質合成系や窒素合成系の遺伝子の発現に違いが見られたが,多くの代謝系では乾湿で差が認められず,乾湿サイクル下での代謝制御が転写レベルで行われていない可能性も考えられた.ハコネサルオガセに由来する菌,藻,菌+藻それぞれの培養株を用いて,遺伝子発現探索を行っており,これまでに,①菌株と再合成株との間で発現遺伝子を差し引いたもの,②藻株と再合成株との間で発現遺伝子を差し引いたものについて次世代シークエンサーで解析を行い,計276323リード得ている.これらからcontigを作成し,得られた発現遺伝子配列についてBLASTX検索によって解析を行っている.地衣類共生状態から脱共生状態になると形態が変化するツブレプラゴケBotryolepraria lesdainiiの共生藻について,分類・系統的位置を明らかにした.広島,群馬,東京産ツブレプラゴケから単離培養した株を解析した結果,本種は形態的にはSticococcus mirabilisに一致していたが,葉緑体rbcL遺伝子にもとづく分子系統解析では2つのクレードが見いだされた.一方のクレードにはS. sequoieti(UTEX1820)が含まれていたため,S. mirabilisとの関連について詳細な検討を行っている.野生状態のツブレプラゴケ共生藻とその単離培養株から,それぞれのcDNAの作成またはRNAの抽出も行った.今後,共生状態の違いによる発現遺伝子について解析していく予定である.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
Bulletin of the National Museum of Nature and Science, Series B
巻: 41 ページ: 1-7
Journal of Japanese Botany
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