研究課題/領域番号 |
24657043
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山下 正兼 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30202378)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 精子形成 / メダカ / サイトカイン / 細胞培養 / 体細胞分裂 / 減数分裂 |
研究概要 |
本研究では、新規に開発した精子形成の全過程(精原細胞から精子まで)を再現するメダカ細胞培養系を利用し、精子形成の制御機構の解明を目的として研究を実施した。本年度は特にleukemia inhibitory factor (LIF) の精子形成における機能に焦点を絞って研究を進めた。 機能的な組換えLIF蛋白質を昆虫培養細胞Sf9で作製し、これを培養系に添加することでメダカ精子形成におけるLIFの機能を解析した。培養系で作製された精子で自然放卵された卵を受精させるアッセイ系を用いた結果、LIF の添加によって精子形成が促進され、機能的精子が効率良く作られることが明らかになった。また、LIFを強制発現させたメダカ精巣体細胞株をバキュロウイルスを用いた遺伝子導入法で作製し、これを細胞培養系においてフィーダー細胞として用いると、精原細胞の増殖が細胞培養系でも恒常的に起こることが示された。これらのことは、少なくともin vitroにおいて、LIFは精原細胞の増殖制御に働くことが示す。 LIFのin vivoでの機能を探るため、LIF mRNAのメダカ精巣における発現を in situ hybridization 法で調べた。その結果、精原細胞とそれらを取り囲むセルトリ細胞でLIF mRNA が発現していることが明らかとなった。さらに、タンパク質の発現を調べるために抗体を作製し、メダカ精巣切片を免疫組織化学法で調べたところ、LIFタンパク質は精原細胞とそれらを取り囲むセルトリ細胞で発現していることが示され、mRNAの発現結果と一致することが確認された。LIF発現精原細胞をさらに詳しく同定したところ、未分化の精原細胞が分化した精原細胞よりもより強くLIFを発現していることが判った。これらの結果から、メダカ精巣において、LIFは精原細胞の増殖・分化に関わることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画していた2研究課題のうち、「1.精原細胞の増殖と分化に対するサイトカイン(LIF・IL-11a)の機能」については、組換え蛋白質によるLIFの機能については目的を達成したが、精巣の形成・分化過程(特に精原細胞の増殖・分化過程)でのLIFの発現変化は、実験材料であるQurtメダカの発育状態が悪く、実施に至っていない。IL-11aについても研究が遅れている。「2.機能未知遺伝子の精原細胞の増殖と分化への関与」については担当予定の大学院生が体調を崩したため、研究が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
計画していた2研究課題のうち、「1.精原細胞の増殖と分化に対するサイトカイン(LIF・IL-11a)の機能」については、実験材料であるQurtメダカを新たにメダカバイオリソースから入手したので、これを生育して、精巣の形成・分化過程(特に精原細胞の増殖・分化過程)でのLIFとIL-11aの発現変化を解析する。IL-11aの機能については、組換え蛋白質の作製を急ぎ、その機能を培養系で確認する。「2.機能未知遺伝子の精原細胞の増殖と分化への関与」については、担当予定の大学院生が体調を回復させて実験が可能となったため、予定していた研究を進める。研究代表者自身も研究実施に積極的に関わり、研究の遅れを取り戻す。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題の遂行にあたり必要な機器や設備はすでに整備済みのため、主要な研究経費は、実験の実施に必要な消耗品費と研究成果の発表や情報収集を目的とした学会等の出張にかかる国内旅費である。 本年度予算の未使用額は3月中に発注・納品した物品の支払いが完了していないために生じたものであり、予算の執行はほぼ予定どおりに行われている。
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