本研究では新規に開発した精子形成の全過程(精原細胞から精子まで)を再現するメダカ細胞培養系を利用し、精子形成の制御機構の解明を目的として研究を実施した。特にleukemia inhibitory factor (LIF) の精子形成における機能に焦点を絞って研究を進めた。 平成24年度の研究で、昆虫培養細胞Sf9で作製した機能的な組換えLIF蛋白質を培養系に添加する、あるいはLIFを強制発現させたメダカ精巣体細胞株をバキュロウイルスを用いた遺伝子導入法で作製し、これを細胞培養系においてフィーダー細胞として用いると精原細胞数が増加することが判った。この結果はLIFが精原細胞の増殖を促進することを示唆するが、精原細胞から精母細胞への分化がLIFによって抑制されている可能性も否定できない。平成25年度はLIFの精原細胞に対する効果をさらに詳細に解析するため、1)精原細胞を幹細胞型(タイプA)と分化型(タイプB)に区別する方法、2)標識した細胞を追跡することで培養系における細胞動態を解析する方法を検討した。 その結果、1)新規に作製したゼブラフィッシュPiwi様蛋白質1に対する抗体はメダカホモログを認識してメダカ精原細胞のみを染め、さらにタイプA精原細胞をより強く染めるため、タイプAの精原細胞とタイプBの精原細胞を区別できること、2)細胞をPKH26で標識することで、その後の培養下での増殖・分化を追うことが可能であることが明らかとなった。これらの新しい実験ツールを用い、セルソーターで単離した精原細胞に富む細胞分画を様々な培養条件下で培養した結果、LIFはメダカ精原細胞の増殖・分化を制御することが明らかになった。
|